近年、AIスピーカーやコミュニケーションロボットなどが私たちの日常生活に浸透し始めた。こうしたAIやロボットは、今どのような状況にあり、今後どのような形で人の生活に役立つのか。ヒューマノイドロボット「Pepper」の開発に携わったのち、ロボットベンチャー企業のGROOVE Xを立ち上げ、「LOVOT」という新しいカテゴリーの製品を数十億円かけて開発中の林要氏に話を聞いた。

機械が人間に取って代わるというのはファンタジー

 AIやロボットといった最新技術は私たちの生活を豊かにする一方で、将来的には人間の仕事を奪うのではないかと懸念する声も聞かれる。「機械が人間に取って代わるというのはファンタジー」と語るのは、GROOVE Xの林要代表(以下、林代表)だ。

 「そもそも生物の本当のすごさというのは、生殖機能と新陳代謝機能の2つを持っていることであって、極論すれば知性を持っていることではないんですね。その2つの機能を行うために、結果として知性を発達させたことが有利に働いた種がいたということです。ですから、知性がなくても生き残った生物はたくさんいます。例えば植物がそうです。機械というのは生殖もしなければ新陳代謝もしないという意味からすれば、機械が人間に取って代わるというのはファンタジーですね」

 生殖機能と新陳代謝機能という、ロボットにはない2つの機能こそが生物たる所以であると林代表は話す。そして、改めてロボットというものの役割について解説する。

 「基本的にロボットというのは、『人がつくった、人の代わりに仕事をするもの』です。人間がやってもらいたい仕事をするのが基本的なロボットの概念なので、そういう意味では、人がやりたいことに集中するためにロボットは必要なのです。人が苦手で苦痛なことを、どんどんロボットが担っていくという傾向は、人がつくり出すモノである以上はこれからも変わらないんだろうなと思います」

 今、人が苦痛に感じることを代わりに作業してくれるロボットの代表格といえば、ロボット掃除機だろう。産業用ロボットなどではなく、多くの一般家庭で日常的に使う身近なロボットとして急速に普及している。その要因について林代表はこう分析する。

 「問題解決のターゲットが明確で、対応が必要なバリエーションが限定的なのは、ロボットが得意な領域の一つです。特に掃除が大変なのは、自分が汚してしまったものだけでなく、環境によって何もしないでも、部屋は毎日汚れていく。それを日々ケアしなければならないということです。できることなら、誰か代わりにやってくれないかと多くの人が望んでいたわけです。大家族が普通だった時代には家族で分担できたかもしれませんが、核家族化が進んだ中でそういった仕事の一部をロボットに託すのは、極めて合理的なことですよね」

 このようにロボット掃除機の役割を語る林代表。中でも、パナソニックのRULOを「ロボット掃除機として一つの完成形に達したもの」と高く評価する。次ページ以降ではRULOの開発者とともに、その魅力を探っていく。

GROOVE X株式会社 代表取締役
林 要(はやし・かなめ)氏
1973年生まれ、愛知県出身。東京都立科学技術大学卒。1998年にトヨタ自動車に入社。その後、ソフトバンクロボティクスで「Pepper」の開発に携わる。2015年にロボットベンチャー企業のGROOVE Xを設立