2018年の大きなニュースのひとつに築地市場の閉場が挙げられる。市場で使われる小型運搬車「ターレット」が大挙して豊洲市場へ引っ越しする様子を見た人も多いだろう。今回は、知ってるようで知らない「ターレット」の先進性について、現役レーシングドライバーでありながら、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める木下隆之氏が解説する。

 「築地市場が豊洲に移転する。その渦中、ターレットの大移動が始まった」

 動力付きのリアカーである「ターレット」(ターレット式構内運搬自動車)が、環状2号線を疾走する姿に興味を引かれた人も多いだろう。というわけでターレットの話題。

小型運搬車のターレット
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 実は僕、ターレットにはちょっと詳しい。築地ヤッチャバ(青果市場)でのバイト時代、ターレットを操縦してあちこちに荷物を運んでいたし、自動車業界に身を置くようになってもターレットの存在が忘れられず、国内で製造している岩手県盛岡市の関東農機盛岡工場(関東農機のターレットは“マイテーカー”と呼ぶ)まで取材に行ったことがあるほど“ご執心”なのである。

 ご執心の理由の第一は、その特異な操縦スタイルにある。機構は簡単で、フロントの円筒の下に、エンジンと直結したタイヤが1輪ある。そのタイヤを円筒ごと180度回す。左右に180度だからつまり360度回転する。つまり、動力付き一輪車。その筒にリアカー風の荷台を連結しているだけなのだ。

 運転手は荷台に立って操作する。スロットルは、円筒の縁に沿った円形のハンドルを押すだけ。ブレーキングは足元のペダルを踏み込む。いたってシンプルな構造なのだ。

構造はいたってシンプル
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足元のペダルでブレーキング
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 驚きなのは、ターレットは道路交通法上で小型特殊自動車だから、公道の走行も可能なことだ。豊洲までの大移動が可能だったのはそのためだ。安全が叫ばれている昨今、「立ち運転」が許されている乗り物など、ターレット以外に思い浮かばない。