イージーリスニングはこんなに貪欲な音楽だったんだ、と

――でもそれがイージーリスニングとは、ロック世代の吉田さんとはとても結びつかなかったです(笑)。

吉田 : 僕がだいぶ大人になったので(笑)。確かにイージーリスニングと言うと、お金持ちの家でかかっている音楽というイメージだった。家具みたいなステレオがあって、そこにきれいな女の人のジャケットがあって、「何?」って聞くと、映画の音楽で、演奏だけがあって…。昔は全然分かってませんでしたよ(笑)。大人の音楽だもん、とか言って。

 でも実は気負って聴かなくていいとか、いつでも聴けるとか、なんなら聴き流していいということに気付いて。BGMとして使えるし、ちゃんと鑑賞用にもなる。歌詞がない音楽って僕はやったことがなかったんですよ。絶えず歌がある音楽をプロデュースし、アレンジしたり作ったりしてきて、今も圧倒的に歌が好きですが、イージーリスニングに関しては、いい意味で歌がない良さというのがものすごくある。

 50代以上の方ならよくご存じだと思いますが、パーシー・フェイス、ポール・モーリア、マントバーニなど素敵な音楽はいっぱいあるので、その美しいメロディーを僕たちなりに今のアレンジで聴いてもらいたいなということですかね、今回収束した思いとしては。それを熟練のミュージシャンの手で演奏していきたいという…。

――ちゃんと聴こうと思ったときに、きちっとした演奏が存在していると。

吉田 : はい。今回やるにあたっていろいろなものを今の自分の耳で聴いたんですが、改めて思ったのは、イージーリスニングってものすごく貪欲な音楽だということ。イメージだけで言うと、ストリングスのメロディーが流れて、それをオーボエが引き受けて、次にピアノがメロディーを弾いてストリングスが加わって…、みたいなことでだいたい終わってしまうと思うんですけど、探求してみると、実にあらゆる音楽の要素が入っているんです。ポップスはもちろん、クラシック、ラテン、ジャズ、ボサノバ…。ありとあらゆる音楽様式を貪欲に取り込んでいて、その楽団なりにアレンジして自分たちのオリジナルとして提供してるんですね。で、いざやってみようとなると、演奏技術も高くないとできないものが多い。昔、お金持ちの友達の家に行ってバカにしてたのを反省しました(笑)。

――随分時間がかかったわけですね(笑)。

吉田 : やっと目が覚めた(笑)。非常に懐が深くて、音楽的にもたやすくない様式だなということで、今回制作に至りました。