「おいしい」「いい香り」「チョコレートがこんな風に変わるんだ」ーー。2018年11月1日の夜、東京駅に程近い東京国際フォーラム会議棟の1室は甘い香りと雰囲気に包まれていた。筆者もそこにいた。

「ホットチョコレートマシン」を操作してドリンク作りを実演してみせる、ミツバチプロダクツの浦はつみ社長
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 ミツバチプロダクツ(東京・港)という、それまで名前を聞いたことがなかった会社の社長である浦はつみ氏が自ら、同社製の「ホットチョコレートマシン」でチョコレートドリンクを作り、記者たちに振る舞った。固形のチョコレートがマシンから出る蒸気で溶けて、程よく泡立った飲み物に変わる。筆者は普段チョコレートをあまり食べないが、このホットチョコレートドリンクはうまかった。少なくとも筆者にとっては、固形のチョコレートを食べるよりも満足度が大きい。

固形のチョコレートをマシンの蒸気で溶かして、ドリンクを作る
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 東京国際フォーラムでは2018年10月30日から5日間、パナソニックの創業100周年記念イベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」が開かれていた。筆者は連日会場入りして、取材に駆け回っていた。100周年という大きな節目となるイベントの会場は、人であふれ返っていた。

 会場ではこの期間に合わせて、重要な発表も相次いだ。そんななか、筆者にとって最も印象に残ったのが、このミツバチプロダクツという「小さな話」だった。そもそもこの会社は、パナソニックとどんな関係にあるのか。パナソニックとチョコレートという意外すぎる組み合わせに、まず驚いた。

投資会社を通じて、新事業を生み出す試みの第1号

 ホットチョコレートマシンは家電の一種である。だがこのマシンを開発したのはパナソニックではなく、ミツバチプロダクツだ。同社は2018年9月に設立されたばかり。まさに生まれたてのスタートアップ企業である。そして、パナソニックによる家電分野の新規事業創出スキームの第1号案件でもある。これまでにない家電を生み出そうとしているパナソニックの狙いは理解できるが、まさかホットチョコレートマシンを出してくるとは、筆者には想像できなかった。

 パナソニックは米シリコンバレーに拠点を置くベンチャーキャピタルである米スクラムベンチャーズと共同で、投資会社BeeEdge(ビーエッジ、東京・港)を2018年3月に設立している。2018年11月時点のBeeEdgeの株式保有比率は官民ファンドのINCJが33.8パーセント、スクラムベンチャーズが33.8パーセント、そしてパナソニックが32.4パーセントである。パナソニックの出資比率が一番少ない。

 そのBeeEdgeの最初の投資案件がミツバチプロダクツである。同社はBeeEdgeが83パーセント、社長に就任した浦氏自身が個人で17パーセントを出資している。浦氏は現役のパナソニック社員だが、起業すると同時にパナソニックをいったん休職し、新会社の社長に就いた。これだけでも、パナソニックでは異例の出来事である。そこに筆者は興味を引かれた。

 浦氏は1997年に、旧・九州松下電器に入社。調理家電分野のマーケッターとして頭角を現し、社内だけでなく社外でもその名を知られる人物として、家電業界では有名だった。筆者は今回初めて浦氏に会ったが、芯の強そうな女性だなと感じた。