11月に入り、肌寒い日が増えてきた。そろそろしまい込んでいたコートやダウンジャケットを出そうと考えている人も多いのではないだろうか。ダウンジャケットといえば、昨シーズンに爆発的なブームとなったカナダ発のブランド「カナダグース」が記憶に新しい。胸や腕についた特徴的なワッペンを見かけたことがある人もいれば、実際に購入したという人もいるだろう (関連記事「高級ダウン『カナダグース』都心で大増殖のなぜ」)。

 ほかにも、欧州のブランド「モンクレール」やデサントが手がける「水沢ダウン」など、日本製、海外製を問わず、高価格帯のダウンがここ数年支持を集めている。そんななか、“ポストカナダグース”として注目されているのが、2018年秋冬シーズンに日本に初上陸する「ムースナックルズ」だ。

ムースナックルズの「3Q JACKET(3Q ジャケット)」(14万9000円)
ムースナックルズの「3Q JACKET(3Q ジャケット)」(14万9000円)

 ムースナックルズはカナダグース同様、カナダ発祥。2009年にスタートしたブランドで、価格帯は12万~14万円台が中心だ。日本での知名度はまだ低いが、ニューヨークやロンドンなど、冬の寒さが厳しい都市部で人気が高いという。

 日本で同ブランドを独占輸入販売するのは伊藤忠商事。同社はほかにもいくつかのダウンジャケットのブランドを展開しているが、「本物志向のなかにも遊び心があるムースナックルズなら他ブランドと差異化できると考えた」と同社ブランドマーケティング第三部の森本匡史氏は話す。ファッションバイヤーから「カナダグースの次のブランドが欲しい」という声があったことも、日本での展開を決めたきっかけになったという。

「ヘラジカ」と「拳」のロゴが特徴

 全ての定番商品に650~800フィルパワーのダウンを使用。YKKと共同開発したというファスナーは耐久性があり、マイナス40度の環境でも容易に開け閉めができる。高級感のあるフィンランド製のフォックスファーを使用しているのも特徴だ。だが、最初に目が行くのは袖部分についているロゴだろう。

全商品に、写真のようなブランドロゴが入っている
全商品に、写真のようなブランドロゴが入っている

 「ムースはヘラジカ、ナックルは拳という意味。拳を雪面につけた図をロゴにしている」(森本氏)

 見た目は重厚感があるが、実際に着てみると思ったよりも軽い。デザインもアウトドア風だが、カナダグースの流行も手伝って、タウンユースでも受け入れられやすいかもしれない。購買客の中心層は20代後半から50代になるのではないかと同社は見ている。

「カナダグースに飽きた人」の買い替え需要に期待

 昨今の高級ダウンブームを見ると、ファッション全般にお金をかけるというよりは、中に着る服は安価なものを選び、ダウンジャケットだけは高級ブランドという人も少なくない。

 「モンクレールが流行した10年ほど前から、日本でも高級ダウン市場ができている。若い人も高価格帯のダウンジャケットを買うようになった」と森本氏。さらに、「カナダグースもはやりだしてから3年ほどたっている。あのワッペンに飽きてきている人もいるのではないか」と、買い替え需要に期待する。

「BALLISTIC BOMBER(バリスティック ボンバー)」(12万7000円)
「BALLISTIC BOMBER(バリスティック ボンバー)」(12万7000円)

 どうせ高いものを買うならどのブランドか分かるものを選びたいという人もいれば、人とかぶるのが嫌だという人もいるのだろう。カナダグースと同等のスペックを持つ新ブランドとしてムースナックルズを投入することで、ファッション感度が高い人のニーズも満たせると考えたというわけだ。

一番高い商品は40万円

 男性向け、女性向け商品合わせて約70型。一番安いものは約7万円、もっとも高いものは約40万円だ。「(世界各国でも)売れ筋は12万~14万円台。日本でもこの価格帯が中心になる」(森本氏)。

「LAC LA BICHE PARKA (ラ クラ ビッチェ パーカ)」(38万円)は男性向けで最も高額な商品。
「LAC LA BICHE PARKA (ラ クラ ビッチェ パーカ)」(38万円)は男性向けで最も高額な商品。
女性向け商品もラインアップ。「Debbie bomber(デビー ボンバー)」(12万7000円)
女性向け商品もラインアップ。「Debbie bomber(デビー ボンバー)」(12万7000円)

 今シーズンは伊勢丹新宿店、GINZA SIX(ギンザ シックス)、阪急メンズ大阪など、ファッション感度が高い人が集まる百貨店を中心にポップアップショップを6カ所展開。「今シーズンは売り場作りなど商品の見せ方を考えながら、ブランドの認知を高める時期」と森本氏は話すが、いずれも売れ行きは好調。特に阪急メンズ大阪では爆発的な売り上げを記録しているという。また、すでに複数のセレクトショップから来シーズン以降の引き合いがあるという。

 「ビジネスパーソンの通勤服は、今後さらにカジュアル化していくはず。ムースナックルズを会社に着ていくことに違和感がないと感じる人は多いのではないだろうか」(森本氏)

(文/樋口可奈子)

この記事をいいね!する