往復約54kmでバッテリー消費はわずか26%

 電源を入れて走行してみる。モードはアシストの効きが強いほうからハイモード、スタンダードモード、エコモード、プラスエコモードの4パターンがあるが、ハイモードとスタンダードモードのみを使って走ることにした。YPJ-ECに搭載されるドライブユニットはe-BIKE用にヤマハが開発した「PWseries SE」。小型かつ軽量で、高ケイデンス(※1)でペダルを漕いでもアシストがしっかり効くよう制御されている。

絶対的な運動性能というより、スポーツサイクルならではの走行感や移動距離を負荷なく体感できるところにYPJ-ECの素晴らしさがある。一般的なスポーツサイクルでのツーリングは、荷物を切り詰め、動きやすく通気性の良い専用のサイクルウエアを着用するなど、どうしてもストイックになりがちである。YPJ-ECならばもっと気軽に長距離ツーリングに出かけられる
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 スポーツサイクルでは、軽めのギアを使い高ケイデンスでペダルを漕ぐことによって脚の筋肉の負担を減らす走法が一般的となっている。同じ速度でも重いギア(低ケイデンス)と軽いギア(高ケイデンス)では前者のほうが脚への負担が大きくなり、とくに長距離走行では疲労感に大きな違いが出てくる。ロードバイクなら1分間に75~95回転がその目安だが、PWseries SEは110回転までアシスト可能なパフォーマンスを備えているという。

 もっとも電動アシスト自転車の場合は、いきなり重いギアでペダルを漕いでもそのぶんアシストが強く効いて加速することができる。ただし走行感はスポーツサイクルらしからぬ大味なものとなり、バッテリーの消費量も大きい。

※1:1分間あたりのクランクの回転数。高ケイデンス=回転数が多い、つまりペダルを早く漕いでいる状態。
道中で面白そうな道を見つけたので寄り道。こうしたことを躊躇なくできるのがe-BIKEの強みである。日本、とくに地方は山地が多いのでe-BIKEの登場によって新しい自転車ツーリングのスタイルが確立することになると思う
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 走ってみてまず印象的なのは、自転車としての基本性能の高さである。アシストが強く効くゼロ発進からの加速は確かにパワフルではあるが、それはほんの一瞬に過ぎない。e-BIKEでも一般的な電動アシスト自転車と同様、速度が上がるほどアシスト力を徐々に減少させ、24km/hでアシストは0になるよう法律で定められているが、YPJ-ECの真価はむしろほとんどアシストが効いていない20km/hより上の速度で発揮される。

 自転車は速度が上がるにつれ、減速させるさまざまな走行抵抗が発生する。タイヤの転がり抵抗やハブやチェーンなどの駆動部品による摩擦抵抗、そして空気抵抗だ。YPJ-ECはフレームの精度や剛性、パーツのクオリティーが高いため、摩擦抵抗や転がり抵抗が少なく、速度が乗ってしまえばアシストの領域を外れたスピードでも難なく走り続けられる。

フレームの剛性や精度や、パーツのクオリティーが高いため、摩擦抵抗や転がり抵抗が少ない
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 筆者はスポーツサイクルユーザーとしては中程度の脚力だと思うが、平地で26~29km/hでラクに走ることができた。これはアシストが効いていない速度域だ。そのため驚くほどバッテリーが減らない。ハイモードとスタンダードモードを多用し、上り道ではアシストに頼り切った走り方をしていたにもかかわらず、往復約54km(獲得標高515m※2)でわずか26%しか消費していなかった。今回のように一般的な道であれば、1日の走行でバッテリーを使い切ることはまずないだろう。

 途中まったく息を切らすことなくこの距離を走り切ることができたというのは従来の自転車では体感したことのない不思議な感覚である。

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※2:スタートからゴールまでに登った高さの総計。