シニア向けの「ひとり旅」を手がけるクラブツーリズムの隠れた人気ツアーが「羽田空港でランチと主要集合場所めぐり」。同社主催のツアーに参加する際に出発地点となる東京駅、羽田空港の集合場所を見て回る。それだけなのに毎回満員の大盛況だという。はたしてどんなツアーなのか。前編は記者が実際に参加。後編では、企画担当者に企画の意図を聞いてみた。すると、意外な人気の秘密が分かった。

 「最近、母が集合場所を確認するだけのツアーに参加したんだけど、すごく楽しかったんだって」――今回の取材は、編集部内で交わされた、このひと言から始まった。

「集合場所を確認するツアーって何ですか?」
「ツアーでよく使われる東京駅と羽田空港の集合場所に集まるんだけど、そこを見て回るの」
「それだけ?」
「羽田空港でランチは食べたらしいよ」
「え? でも羽田に行ってランチするだけ?」
「うん、それで4900円」
「4900円!? 高くないですか?」
「でも楽しかったらしい。私にもよく分からないけど」

 クラブツーリズムには、家族や友達との参加は不可、1人参加限定の「ひとり旅」というツアーがある。日中の観光や食事はほかの参加者と一緒だが、夜は1名1室で1人の時間をゆっくり楽しめるのが特徴で、「1人で気楽に旅に出たいけれど、ちょっと心細い」という人に人気だという。

 編集部員のお母さんが参加したツアー(以下、集合場所確認ツアーと呼びます)は、主にこのひとり旅に興味がある人、参加予定の人を対象に、ひとり旅の説明と、出発地となる東京駅や羽田空港の集合場所の下見をするためのものだという。本番のひとり旅と同様、1人での参加限定だ。どうやらひとり旅の説明会とお試し会、集合場所確認を兼ねているようだ。

 「説明会とお試し会で4900円とはなかなか強気」と思いながらクラブツーリズムに問い合わせてみると、「毎月数回実施しているが、ほぼ満席の人気ツアー」という。正直意外。その人気の秘密は何なのか。まずは実際に参加してみた。

申し込み後に送られてきた案内一式。出発地は新宿を選んだ。朝9時40分に、新宿駅西口に集まる。今回は、おまけで東京ステーションギャラリー見学もついている
申し込み後に送られてきた案内一式。出発地は新宿を選んだ。朝9時40分に、新宿駅西口に集まる。今回は、おまけで東京ステーションギャラリー見学もついている

30代から80代、全員女性の参加者

 今回、記者が参加したのは6月開催のツアー。出発地となる新宿または上野に集まり、まずはバスで羽田空港へ。羽田空港では集合場所を確認した後、空港内のロイヤルパークホテル ザ・羽田でランチを食べ、東京駅に移動。東京駅で集合場所を確認して解散という内容だ。

 当日の参加者は23人。女性ばかりだ。ただ、年齢層は予想よりも広く、30代から80代とのことだった。バスの入り口に張られている座席表で自分の席を確認して座る。みなさん一人参加ということで、ちょっと緊張の面持ち。隣の席に人が来ると、挨拶を交わしている。

クラブツーリズムの専用バス。乗車する前に配られたのは、しおり、羽田空港と東京駅の構内地図のコピー、ツアー参加者用のバッジ。しおりには、今日のスケジュールのほか、ひとり旅の説明が書かれている。バッジの裏には添乗員の携帯電話番号が手書きされていた

 「集合場所確認ツアーに参加するくらいなのだから、迷って遅れる人もいるのでは?」という記者の予想に反し、参加者は時間通りにそろった。後で聞いたところ、皆さんは時間にはかなりの余裕を持って集まってくるらしい。最初に、バスの運転手、次いで添乗員が挨拶し、1日のスケジュールやポイントを説明する。一般的なツアーは添乗員が1人だが、今回の集合場所確認ツアーはなんと2人。「皆さんで移動するときも、先頭と最後尾に添乗員がいます。わからないことがあったら気軽に聞いてくださいね」。想像以上のフォロー体制だ。

バスの運転手がバスの設備などを紹介。「みなさん安心してください。このバス、トイレがついてますよ!」ととにかく明るい安村のギャグ風に説明すると、参加者からどっと笑いが。とにかく明るい安村は、高い年齢の方にも知名度が高いよう
バスの運転手がバスの設備などを紹介。「みなさん安心してください。このバス、トイレがついてますよ!」ととにかく明るい安村のギャグ風に説明すると、参加者からどっと笑いが。とにかく明るい安村は、高い年齢の方にも知名度が高いよう
続いてクラブツーリズムの添乗員の河内良太さんが挨拶。入社2年目の若手で、この集合場所確認ツアーは毎回添乗しているそう。河内さんともう1人、辻加奈子さんが添乗員としてついている
続いてクラブツーリズムの添乗員の河内良太さんが挨拶。入社2年目の若手で、この集合場所確認ツアーは毎回添乗しているそう。河内さんともう1人、辻加奈子さんが添乗員としてついている

 羽田空港までの車内では、河内さんがひとり旅の魅力を説明する。「『ひとり旅』は全員1人で参加していただくツアーです。ほかはお友達同士で、自分だけがひとりぼっちという心配はありません。参加者の方同士、すぐに打ち解けますよ。これまで参加者の最高齢は97歳、一番若い方は22歳です」という河内さんの言葉に湧く参加者。「まあ、97歳はすごいわね」とお隣同士で話す声が聞こえてくる。

 「参加者は女性が多いですが、ブルーインパルス見学やお城巡りツアーは男性も多いですね」と河内さんがさらに付け加えると、今度は「男性はそういうのが好きよね。でも私も見てみたいかも、うふふ」という声がまた聞こえてきた。

 「これは、たしかにすぐに打ち解けそう。編集部員のお母さんが『楽しかった』というのもまんざらでもないかも」と思った。だがこの後、記者はこの集合場所確認ツアーならではの場面を次々目にすることになる。

羽田空港の構造がわかった!

 ひとり旅の説明を聞くうちに、バスは羽田空港に到着した。バスを降りて、河内さんが掲げる「クラブツーリズム」の旗の後ろに全員が続く。ふと、隣を歩いていた70代とおぼしき女性がひと言。「羽田空港には家族と来たことがあるけれど、『ひとり旅』に参加するなら1人で来ないと行けないでしょう? そうなると来られるかどうか不安なのよ」

 最初に到着したのは、空港第2旅客ターミナルの1番時計台。ここは、ANAの飛行機を利用する国内ひとり旅の集合場所だ。「羽田空港の第1、第2ターミナルの違いは航空会社の違いです。ANAは第2、JALは第1。この後、JALにも行きますが、両方はつながっているので、もし間違えても歩いて移動できるから安心して」と河内さん。

 その説明の傍らで、偶然にもこの日出発の「はじめての四国ひとり旅3日間」ツアーが集合中だった。「ちょうど良かった。皆さんがひとり旅に参加されるときも、このようにクラブツーリズムのスタッフが立っています」(河内さん)。これから四国に向かう人が、うれしそうに受け付けをしている。それを興味深く見つめる集合場所確認ツアーに参加中の人たち。偶然とはいえ、これはいいイメージトレーニングになりそうだ。

旗の後ろをついて、最初の集合場所1番時計台に到着。地図と照らし合わせる。ツアーの旗を掲げているのに、時計台の下からなかなか動かない集団。少し周りの注目を集めている気がした
たまたまこれから出発するツアーの集合と遭遇。続々集まってくる人たちを見ていると、本番のひとり旅もやはり女性の参加者が多い様子
たまたまこれから出発するツアーの集合と遭遇。続々集まってくる人たちを見ていると、本番のひとり旅もやはり女性の参加者が多い様子

 続いて、空港第1旅客ターミナルに移動する。空港第1旅客ターミナルでは、1番時計台と3番時計台、2カ所の位置を確認した。いずれもJALの飛行機を利用する国内ひとり旅の集合場所だ。河内さんが説明する。「さて、ANAは集合場所が1番時計台1カ所でした。ANAの場合、当日になるまで搭乗口がどのあたりになるか分からないので、行き先にかかわらず1番時計台に集まります。一方、JALの場合は行き先方面でだいたいの搭乗口が決まっています。南方面へ出発するときは1番時計台のほうが、北方面へ出発するときは3番時計台のほうが近いので、集合場所も2つ設けているのです」。

 何度も羽田空港に来ている記者もこれには「へぇ~」と感心。JALで南方面にも北方面にも行ったことがあるが、そんなことは気づかなかった。そういえば、羽田空港に来るときは、JALならモノレールの羽田空港第1ビル駅で、ANAなら羽田空港第2ビル駅で降りてしまうので、歩いて移動したのも初めてだ。改めて「歩ける距離なんだな」と実感した。

 また、こうして眺めてみると、空港にはあちこちに番号がついている。時計台しかり、ターミナルの出入り口しかり。「もし迷ったときには、添乗員に電話をして、近くに見える番号を言えば迷子になることはない」というアドバイスにもうなずかされた。

JALで南方面へ旅立つときの集合場所、1番時計台。こうしてみると、第1ターミナルと第2ターミナルで時計台の形が違うことに気づく。第2ターミナルは円形だった
JALで南方面へ旅立つときの集合場所、1番時計台。こうしてみると、第1ターミナルと第2ターミナルで時計台の形が違うことに気づく。第2ターミナルは円形だった
3番時計台の説明時、「外を見てください」と河内さん。「道路があるので1階と思われるかもしれませんが、今いるのは2階です。1階は到着ロビー。ご家族を迎えに来るときは1階です。間違えないでくださいね」。こう説明されると覚えやすい
3番時計台の説明時、「外を見てください」と河内さん。「道路があるので1階と思われるかもしれませんが、今いるのは2階です。1階は到着ロビー。ご家族を迎えに来るときは1階です。間違えないでくださいね」。こう説明されると覚えやすい

「ホームを降りたら深呼吸」

 「空港までは、電車で来る人が多いと思います。実は駅は地下。今から行ってみましょう」(河内さん)。再び旗について、エスカレーターを降りる。隣を歩く女性に、「あなたは何で空港まで来る?」とたずねられた。「私はモノレールか、自宅からだと案外リムジンバスが便利ですね。荷物を持って階段を上がり降りしなくてもいいし」と答えると、「でも、バスは遅れるのが怖くない?」と返された。「うーん、時間に余裕を見れば大丈夫じゃないかなぁ。遅れたことはないですよ。むしろいつも早く着き過ぎちゃう」と記者。「でもね、もしも遅れて、集合場所に誰もいなかった、なんてことになったら怖いじゃない?私はやっぱりモノレールかしら」。

 そうこう言っているうちにモノレールの駅の改札に到着した。河内さんは、モノレールの改札を背に、羽田空港につながる駅は3つあること、第1旅客ターミナルが羽田空港第1ビル駅というようにターミナルと駅名が対応していることなどを説明する。

モノレール駅の改札で交通機関についても説明
モノレール駅の改札で交通機関についても説明

 さらに、モノレールの奥に京急線の改札があることも説明。「実は京急線の駅は2つだけ。国際線ターミナル駅と国内線ターミナル駅です。そして、国内線ターミナル駅で出る改札によって、第1旅客ターミナルと第2旅客ターミナルのどちらに行けるかが違います」(河内さん)。ここでざわつく参加者の皆さん。「難しいわね……」「行けるかしら……」といったささやき声があちこちから聞こえる。

 その不安を見越したように、河内さんは「大丈夫です。空港には『これでもか!』と言うくらい案内の矢印があります。ホームに降りたら、まずは深呼吸をして、周りの矢印を見てください。分からなければ、案内所もありますから聞いてください。さっき歩いてきたとおり、第1と第2ターミナルはつながっているから、万一間違っても心配ありませんよ」。

 その後も、河内さんと辻さんの2人の添乗員に、参加者の皆さんから次々と質問が出る。「前日ホテルに泊まった方がいいのか」「東京駅から来るなら、どの方法がいいのか」「何分前くらいに羽田空港に到着すれば安心か」。その一つひとつに2人が答えるたび、参加者の人たちの表情に納得の色が見えてくる。

 見学の間には、一時解散して自由行動の時間もあった。お土産を買う人、お手洗いを済ます人、展望台を見に行く人、その過ごし方は様々だ。でも、この集合場所ツアーならではなのが、“おさらい”をする人の存在。地図を見ながら、案内されたルートを1人でもう一度歩いてみるのだという。まるで自主練。真面目である。

自由行動の時間、希望者は添乗員の案内してもらって展望台を見学。その間も空港までの交通手段など様々な質問が出る
自由行動の時間、希望者は添乗員の案内してもらって展望台を見学。その間も空港までの交通手段など様々な質問が出る

ランチしながら参加の理由を聞いてみた

 この後は、ターミナル間無料連絡バスに乗って、国際線ターミナルに移動。乗り継ぎでもしない限り、国内線と国際線のターミナルを連絡バスで移動する機会は少ないが、実際に乗ってみると、第1、第2ターミナルと国際線ターミナルがつながっているということを改めて認識する。参加者には「もし間違ったターミナルに出ても、時間に余裕さえあれば移動できる」という安心感を与える効果があるようだった。

無料連絡バスで国際線ターミナルへ移動
無料連絡バスで国際線ターミナルへ移動

 国際線ターミナルでは、ターミナル内にあるロイヤルパークホテル ザ・羽田でランチコースを食べる。4人掛けテーブルに座ると、同席になった女性2人に「もしかして、あなたが取材の人?」と声をかけられた。どうやら参加者には、クラブツーリズムから当日記者が体験参加する旨が伝えられていたようなのだ。それに、ツアーの間中、写真やメモをとりまくっていた記者はちょっと浮いてもいたらしい。「何でも聞いて!」というお言葉に甘えて、参加の理由を聞いてみた。

 一方の女性は、なんと福島県から、都内で前泊して集合場所確認ツアーに参加したという。過去に1度、ひとり旅に参加したところ、とても楽しめた。次は飛行機に乗って、もっと遠くに行ってみたい。それには東京駅や羽田空港での集合が必須になるので、下見のために参加したのだという。「新幹線は大丈夫。でも飛行機はあまり乗ったことがないから不安なの」。

 もう一人の女性は、かなり旅慣れた方。これまで主要な観光地を回ったので、今後はひとり旅でこだわりの旅をしてみたいという。「友達を誘っても、娘に聞いてからとか家族に聞いてからとか言われてなかなか決まらない。それならもう自分で行っちゃおうって思うのよ。でもね、同じような人が多いのか、参加してみると初対面なのに意外とフィーリングが合ったりして楽しいの」。唯一の不安が集合場所に行けるかどうかなのだそうだ。「分かる、分かる」と言いながら、2人は楽しそうにうなずき合う。「あれ? お二人も今日会ったばかりですよね? なんか数年来のお友達みたい」と私が言うと、「そうでしょう? 今日会って、帰りがけには『またどこかで』と別れるのが気楽でまたいいのよ」といたずらっぽい笑顔がこぼれた。

ランチは国際線ターミナル内にあるロイヤルパークホテル ザ・羽田で。この日は、サーモンのムニエルにサラダとデザート、コーヒー/紅茶がついたコース。集合場所確認ツアーのための特別メニューだそうだ。非常においしかった
ランチは国際線ターミナル内にあるロイヤルパークホテル ザ・羽田で。この日は、サーモンのムニエルにサラダとデザート、コーヒー/紅茶がついたコース。集合場所確認ツアーのための特別メニューだそうだ。非常においしかった

東京駅は羽田よりも“ラビリンス”

 ランチの後は自由行動の時間を経て、再びバスに乗り込み、東京駅へと向かう。この頃になると、皆さんすっかりお友達になっている。中にはLINEのIDを交換している人もいた。それぞれ一人参加だなんて、ちょっと信じられない。

 バスの中でも和気あいあい。「羽田空港まで行くときは『ひとり旅』についてご説明しました。ここでちょっとおさらい。『ひとり旅』○×クイズをやってみましょう」という河内さん。問題を読み上げると、あちこちから「マル!」や「バツ!」という声が聞こえて、まるで修学旅行である。

 さて、記者が「わざわざ集合場所を確認する必要があるのか?」と思っていたのは羽田空港よりも東京駅だ。だが、集合場所に到着して「ああー、なるほど!」と思った。東京駅の集合場所は東海道・山陽新幹線の日本橋口を出てすぐ。新幹線の改札からなら近いが、在来線や地下鉄からだと非常に分かりにくいのだ。

 河内さんは地図を見せながら説明する。「東京駅に来るには、JR、地下鉄などいろいろあります。でも、お薦めはJR。なるべくJRで来てください。そして、八重洲北口を出ます。地図には複数の改札口が書いてありますが、全部無視。八重洲北口だけを覚えてください!」。

東京駅構内の地図のコピーを片手に説明する河内さん
東京駅構内の地図のコピーを片手に説明する河内さん
東京駅構内も旗の後ろを歩いてルートを確認する
東京駅構内も旗の後ろを歩いてルートを確認する

 続いて、八重洲北口から集合場所までのルートを実際に歩いて確認する。「八重洲北口を出た正面は大丸。この景色を覚えてください」「本屋とスターバックス・コーヒーの間を抜けてください」など、特徴を1つずつ押さえていく。集合時間は朝早いことも多いが、本屋やスターバックス・コーヒーは早朝から営業しているので、目印になりやすいそうだ。なるほど。

JRの八重洲北口(左)から出て、正面の景色(右)。確かに「DAIMARU」の文字。「この景色を覚えるのが大切です」(河内さん)

 もう一つ感心したのが、お手洗いについてのアドバイス。「東京駅は改札を出るとお手洗いがほとんどありません。集合するときは、改札を出る前にお手洗いを済ませたほうがいいです。もしくは、新幹線に乗るまで待ちましょう」(河内さん)

 考えてみればそうだった。大丸や地下の東京駅1番街にはあるのだが、遠い。後で河内さんに聞いてみると「東京駅は、羽田以上にラビリンス。迷われると、僕たちもなかなか見つけることができません。なるべく動かないようにしていただきたいんです」とのこと。前述のように、羽田には時計台や出口など各所に目印となる数字がついていたが、東京駅にはそんなものはない。通路も細く入り組んでいる。

 実は、この集合場所確認ツアーも、羽田空港に比べると東京駅はあっさりしていた。集合場所周辺を確認後、バスに戻って解散の場となる新宿または上野に向かう。今回はおまけでステーションギャラリー見学がついていたものの、羽田空港のような自由行動はなかった。それも、東京駅がラビリンスだからなのだという。

 集合場所確認ツアーの取材が決まった当初は、正直「羽田空港や東京駅がいくら広いとはいえ、1日かけて案内するほどのものではないのでは?」と思っていた。羽田空港に着いて、第2旅客ターミナルを歩いているときも、「こんなに丁寧に説明する必要があるのか」と疑問だった。そう、記者はこのツアーを侮っていたのである。

 でも、参加者の皆さんの表情を見ているうちに、漠然と不安を抱えている人にとって、実際にその場所に行って、その場所の景色を見て、思いつく疑問をすべて添乗員にぶつけられるということが、いかに大切なのかがわかった。ある参加者が言っていた「これでバッチリとは言えないわ。でも一度来たことで、少し自信になった」という言葉が印象的だ。添乗員2人がかりで不安を消して自信を与えてくれるなら、4900円は安いかもしれない。おいしいランチコースもついていたし。

 そして、1人で参加しても友達ができた、楽しかったという経験は次の旅への背中を押すのだとも思う。「最初は日帰りから参加して、次は国内旅行。いずれは海外旅行にも一人で行ってみたいんです」と照れくさそうに話してくれた人もいた。そんな皆さんのこれからの一人旅が、たくさんの出会いと楽しみにあふれますように――そう祈りつつ、後編ではクラブツーリズムに企画のきっかけを聞きに行く。

(文/平野亜矢=日経トレンディネット)

この記事をいいね!する