2018年5月8日、マンツーマン指導のプライベートジムを展開するRIZAP(ライザップ)が、同社のECサイトで米と炊飯器の取り扱いを始めた。正確にはタピオカやこんにゃくを米粒状にした加工食品を専用調理器で炊く“ご飯もどき”だが、味や見た目は普通の米とほぼ変わらない。しかし、茶わん1杯分(130g)と比較して糖質を約47%カットしており、低糖質食を心がけたい人に向いているという。
減量中でも「ご飯が食べたい」という声
ライザップといえば炭水化物を控えた「低糖質メニュー」による食事管理が特徴だ。だが、同社によると「会員から『(減量中なので)ご飯を食べられないのがストレス』との声があった」。そこでタイガー魔法瓶と提携し、タイガーが開発した米粒状加工食品「とらひめ」と、とらひめを炊くための「とらひめ専用調理器」の販売に取り組んだという。
「技術力はあるが販売ノウハウがなかった」
一方、タイガーも「健康に気遣いながら、おいしいものを食べてもらいたい」との思いから、穀物アレルギーを持つ人に向けたグルテンフリーメニューを搭載したIHホームベーカリーや、高齢者向けに食べやすく誤嚥しにくい米を炊く炊飯器を開発してきた。今回も低糖質ニーズを見据えてとらひめを開発したが「電気メーカーとして長年培ってきた技術力はあったが、低糖質食を求める人にどうやってアピールしたらいいのかというノウハウがなかった」(タイガー魔法瓶の和田隆弘常務)。そこで、約10万人(2018年3月末時点)の会員から集めた3000万食のデータを蓄積し、低糖質についての知見があるライザップと手を組むことにしたという。
ライザップの高谷成夫取締役によると、メインターゲットは「減量中で糖質を控えたいと考えている人」だ。同社は2015年1月にECサイトで低糖質のパンやパスタなどを扱う食品ブランド「LOCA-Labo(ロカラボ)」の展開を開始し、2018年3月には売り上げを約13倍に伸ばしている。ここにかねてから顧客の要望があったご飯の代替品を追加して、ブランドを強化する。まずはライザップの会員に向けて訴求し、同社が運営する料理教室「RIZAP COOK」が監修したレシピの提供やLINEを使った栄養士との相談サービス、定期購入者向けのサンプル配布などを行うという。
糖尿病患者や予備軍も狙う
さらに、「低糖質の炭水化物を取り扱うことでほかにもターゲットになり得る層がいる」と両者は口をそろえる。糖尿病のため、食事の糖質コントロールが必要な人だ。「糖尿病に罹患している人は増加傾向にある。厚生労働省の発表(2017年9月)では1000万人を超え、予備軍は4000万人いると言われている」(ライザップ)。
そうした人のなかには、主食のために炭水化物を減らしている人も多いだろう。味や食感が米に近い代替食品が浸透すれば、健康と食の楽しみの両立を諦める人が減るのではないかというのが両社の意見だ。
「糖尿病の人に向けての訴求は、学術的な部分を固めてから進めていきたい」とタイガーの和田常務は話す。また、ライザップの高谷取締役も「いずれは販売チャネルを広げていきたい」と展望を語った。
(文/樋口可奈子)