アサヒ飲料は2018年4月27日から、「三ツ矢サイダー」がマイナス5度の冷たさで飲める「氷点下自動販売機」の設置を開始した。販売は9時半から17時までで、1日40本のみ。約1カ月かけて全国の駅やショッピングモールなどに150台ほどを設置する。

東京・お台場のデックス東京ビーチを皮切りに若者やファミリーが集まる場所を中心に設置されるという。仙台泉プレミアム・アウトレット(仙台市)や鳥栖プレミアム・アウトレット(佐賀県鳥栖市)にはすでに設置されている
東京・お台場のデックス東京ビーチを皮切りに若者やファミリーが集まる場所を中心に設置されるという。仙台泉プレミアム・アウトレット(仙台市)や鳥栖プレミアム・アウトレット(佐賀県鳥栖市)にはすでに設置されている

 通常の冷たい飲み物は約5度に冷やされているが、富士電機との共同開発によってマイナス5度の三ツ矢サイダーも同じ自販機で提供することが可能に。約10度も冷たさの違う飲み物を1台の自販機で販売するのは業界初という。アサヒグループホールディングスの當麻剛大広報部副課長は「氷点下に冷やすことで爽快感が増す。新しい楽しみ方を提案し、三ツ矢サイダーを飲む機会が減った方にも改めて魅力を感じてもらいたい」と話す。

マイナス5度の「氷点下の三ツ矢サイダー」以外は、すべて冷たい飲み物の温度帯(約5度)で保たれている
マイナス5度の「氷点下の三ツ矢サイダー」以外は、すべて冷たい飲み物の温度帯(約5度)で保たれている

 4月27日、東京・お台場にあるデックス東京ビーチで全国初となる氷点下自動販売機が設置された。訪れた人は無料で体験でき、ターゲットとなる若者に人気だった。中身は通常の三ツ矢サイダーと同じ。キンキンに冷えた三ツ矢サイダーを自販機から取り出しすぐにキャップを開けると、白い冷気が勢いよく出てきたと同時に中の液体が凍り始める「フリージング現象」が起きた。飲んでみるとシャリシャリとした食感とともに、炭酸がきめ細かな泡のようにシュワシュワと口の中に広がる。筆者は通常の炭酸飲料のツンとした刺激が鼻をつくのが苦手だったが、かき氷のような食感と相まって刺激は強すぎず、爽快感を得られた。

「フリージング現象」で栓を開けた瞬間にシャーベット状になる。シャリシャリを味わうコツは自販機から取り出したらなるべく早く開けて飲むこと
「フリージング現象」で栓を開けた瞬間にシャーベット状になる。シャリシャリを味わうコツは自販機から取り出したらなるべく早く開けて飲むこと

時間と本数を限定する理由

 実はアサヒ飲料はこれまでも氷点下で飲む三ツ矢サイダーにチャレンジしている。2014年には今回のようにマイナス5度で飲める「三ツ矢フリージングサイダー」をセブン‐イレブン限定で発売。冷やしてもおいしさを感じられるよう、通常の三ツ矢サイダーより甘みを足した。若者を中心に反響は上々だったが、専用冷蔵庫から自分で扉を開けて取り出す方式だったため、開閉を繰り返すうちに温度を一定に保つのが難しくなるという課題が残った。

 そこで今回は自販機での販売とし、毎日9時半から17時までと販売時間を限定した。それ以外の時間でじっくりと「冷やし込み」をすることで、販売時間中はムラなくマイナス5度に保てるようにするためだ。1日に40本に限定しているのも均等に冷やすため。同社研究開発本部技術研究所の菅沼剛氏は「甘みを足さなくてもおいしく飲める最適な温度がマイナス5度だということに行き着くにも相当の時間がかかり、完成まで5年を費やした」という。最適に冷えていなければ「準備中」の表示が出て販売しないという。

その日の残り販売可能本数がパネル表示される
その日の残り販売可能本数がパネル表示される

 販路をコンビニから自販機に変更したのは、温度管理以外の理由もある。當麻さんは「自販機は飲料業界の約3割を占め、飽和状態にある。付加価値をつけて自販機で買ってもらう機会を増やしたい」と話す。酷暑が予想される今年の夏。氷点下5度の勢いを借りて三ツ矢サイダーは前年比約107%を目指す。

通常の自販機は商品が3段に並び、小さい子供の手が届きにくい。子供が自分でも買えるように4段設計で、低い位置にボタンを設置している
通常の自販機は商品が3段に並び、小さい子供の手が届きにくい。子供が自分でも買えるように4段設計で、低い位置にボタンを設置している

(文/北川聖恵=日経トレンディネット)

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