JR土浦駅に日本最大級の規模をうたった、サイクリスト向け複合施設「PLAYatre TSUCHIURA(プレイアトレ土浦)」が2018年3月29日にオープンした。プレイアトレ土浦はこれまでの駅ビル「ペルチ土浦」のリニューアルにより誕生。今後、2019年秋以降のグランドオープンに向けて、4期に分けて開業していく予定で、その第1弾としてレンタサイクルやシャワー、更衣室、コインロッカーを備えた「りんりんスクエア土浦」、サイクルショップ「ル・サイク」、自転車ブランドとコラボした「タリーズコーヒー」などが開業した。
つくば霞ヶ浦りんりんロードの玄関口に
この場所にサイクリスト向けの施設ができた理由は、土浦駅が「つくば霞ヶ浦りんりんロード」の玄関口だから。つくば霞ヶ浦りんりんロードは旧筑波鉄道の廃線敷を整備したサイクリングロード(約40km)に霞ヶ浦を一周する湖岸道路(140km)をつなげた日本有数のサイクリングコース。特急電車を使えば東京駅から約49分というアクセスの良さから、自転車を電車に持ち込んで移動する「輪行」で訪れるサイクリストも多い。
プレイアトレ土浦のプロジェクトリーダーを務めた藤本沢子氏は、「従来までの『モノを売る』ことを目的にした駅ビルからの脱却をテーマに、『コト発信』『体験の提供』を主軸とした新しい駅ビルの形にチャレンジしたい」と開業時のあいさつで発言した。
土浦駅の駅ビルは1983年に開業。35年という長い歴史があるが、売り上げのピークはバブル経済が頂点に達した1991年で、以降は近郊のロードサイド(幹線道路沿線)にショッピングセンターや大型店が相次いで出店したことや、つくばエクスプレス開通に伴う沿線への人口流出、購買層が鉄道を利用しなくなったなどの理由から、業績は徐々に低迷していったという。しかし、地域社会との結び付きが強い駅ビルという特性上、売り上げが悪いからといって閉鎖するわけにはいかない。そこで「モノ」ではなく「コト」を売るための施設へと転換することになったわけだ。
手ぶらでサイクリングが楽しめる施設目指す
現時点での見どころは手ぶらでもサイクリングが楽しめる施設が整備されたことだろうか。さらに今年11月には約500坪のフロアスペースにカフェやレストランを集めたフードゾーンが開業し、2019年5月には地元茨城の人気ショップを集めたフードマーケット、2019年にはホテルをそれぞれオープンさせる予定だという。首都圏在住のサイクリストに加え、普段はサイクリングと無縁の一般観光客の誘致したい考えだ。
ただし、りんりんロードはサイクリングコースとしては素晴らしい道に違いないが、しまなみ海道のように、そこならではの絶景が望めるわけではない。レンタサイクルを利用する一般観光客まで呼び込むためには自転車プラスαの楽しみが必要になってくるだろう。第2弾、第3弾のオープンには地元の名産品が楽しめるショップも加わるとのことなので、ぜひそちらに期待したい。そこでしか味わえないおいしいグルメがあれば、無機質なサービスエリアにだって人は集まるのだから。
(文・写真/佐藤 旅宇)