いま柚子に熱い視線が注がれている。ぽん酢などの調味料やジュースなどのドリンク類、料理やスイーツの食材として、国内はもとより、ヨーロッパの一流シェフや著名なパティシエからも高く評価されている。そんな日本を代表する柑橘類の柚子だが、その栽培の実態についてはあまり知られていない。そこで、世界で戦える日本発の食材としての柚子の魅力と可能性、生産地の現状などに迫った。

 最近、柚子果汁を使ったさまざまな商品が人気を博している。魅力は独特の爽やかな味と香りだが、日本人が柚子を好む傾向は、今に始まったものではない。

 「日本料理は香りの料理です。その点で、和食と柚子は切っても切れない間柄にあります」。100年の歴史を誇る京都の老舗料亭「菊乃井」の常務で、アンチエイジング料理の第一人者でもある堀知佐子氏は言う。

京都の老舗料亭「菊乃井」常務の堀知佐子氏

 「和食のお椀の香りものに使えるのは木の芽と柚子で、木の芽を使うのは2月と3月だけ。1年のうちの10カ月はお椀の中の柚子を見て季節を知るというのが和食の習わしです。初夏の『花柚子』から始まって、夏は『青柚子』、寒い季節は『黄柚子』といった具合です」(堀氏)。

 柚子の魅力は“香り”だけでない。近年は機能性の高さでも注目されている。柚子には、弾力のある血管を保ち美肌効果のあるβクリプトキサンチンのほか、皮の白い部分に含まれるフラボノイド系のポリフェノールのヘスペリジンなど、抗酸化成分、いわゆる“アンチエイジング成分”が豊富に含まれている。

 「特に柚子は皮も食べますが、皮のオイルにはビタミンCや『アンチエイジングビタミン』と呼ばれるビタミンEも含まれていて、美容と健康にもいい」と堀氏は言う。

 味も香りも良く、美容や健康にも良い柚子は、ここ数年、ヨーロッパでも注目されている。「イギリスやデンマーク、特に料理文化が発達しているフランスでは、何年か前から日本料理のゆずの使い方に関心が高くなっていて、料理の前菜やデザートなどにも使われ始めています」(堀氏)。

 海外でも人気の高い柚子だが、日本から青果の柚子玉として輸出されるようになったのは、わずか3年数カ月前のことだという。

 そこで、青果の柚子を日本で初めて海外に輸出した高知県安芸郡の北川村を訪ねて、世界に通用する柚子生産の現状を取材した。

[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]
堀知佐子氏は柚子と高知の食材を組み合わせたレシピの開発・提案も行っている