ローソンHMVエンタテイメントが運営する書店「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE(以下、日比谷コテージ)」が2018年3月23日にオープンした。

 HMV&BOOKSブランドとしては2015年11月の渋谷店、2016年4月の博多店につぐ3店舗目となる。だが、日比谷コテージはこれまでの2店舗とは違い、女性をターゲットにしたコンセプト店舗として展開していくという。

「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」。東京都千代田区有楽町1-2-2 日比谷シャンテ3F。店舗面積は約625平米。営業時間は11~20時。不定休
「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」。東京都千代田区有楽町1-2-2 日比谷シャンテ3F。店舗面積は約625平米。営業時間は11~20時。不定休

 同社の覚張正浩事業戦略室長は「日比谷は帝国劇場や宝塚劇場などの劇場や映画館が多く、女性客とも親和性が高い。日比谷というエリアにふさわしい店舗を考えたとき、女性をターゲットにすることを考えた」と、狙いを語る。

 

一面ピンクの表紙がずらり

 店舗があるのは日比谷シャンテの3階。エスカレーターを上がると、花や小鳥のイラストを使ったモビールが目に入る。書店というよりはインテリア店や雑貨店のような雰囲気だ。正面は新刊などの特集コーナーが設けられているものの、ラインアップは通常の書店と変わらないように見える。

 だが、店内に足を踏み入れると印象が一変。大きな鏡と華やかなイラストのソファがあるエリアには、所狭しと菓子や雑貨が並べられている。さらに奥に進むと、壁一面にピンク色の表紙の文庫が並んだ棚が登場。一般的な書店では文庫本は出版社や作者名ごとに分類されることが多いが、このコーナーでは海外の小説の隣に日本のエッセイが置かれるなど、規則性がない。「この棚は季節のコーナーとして、定期的にラインアップを入れ替える。今回は春ということでピンク色の表紙の書籍を集めた」と、同店の花田菜々子店長は説明する。

ギャラリースペースには同店の店内装飾を手がけたイラストレーターの利光春華氏の書籍や、利光氏がイラストを手がけた菓子が並ぶ
ギャラリースペースには同店の店内装飾を手がけたイラストレーターの利光春華氏の書籍や、利光氏がイラストを手がけた菓子が並ぶ
ピンクの表紙の文庫本が並んだ棚
ピンクの表紙の文庫本が並んだ棚

 “ピンクしばり”の棚だけでなく、店内で大きなスペースを占めるのが花田店長がセレクトした女性向けの書籍が並ぶ「コテージ・セレクト」。日比谷という場所柄、30歳以上の客を想定。恋愛や子育て、仕事に関連する書籍を集めているという。「ひとくちに女性といっても、K-POPが好きな人もいれば社会問題に興味がある人もいる。どんな人にも関心を持ってもらえるような店舗を作った」と花田店長が話す通り、扱うジャンルは幅広い。

 商品構成は書籍6割、CDやDVDが3割、雑貨類が1割。華やかな内装や雑貨類が目立つが、ビジネス関連の書籍や雑誌のコーナーもある。「メインターゲットは女性だが、女性へのプレゼントを探すときなど、男性にも気軽に来店してほしい」(花田店長)。

HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEの花田菜々子店長
HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEの花田菜々子店長

「HMVイコール音楽」というイメージだけにはしたくない

 HMVといえばCDショップ、というイメージを持つ人も多いだろう。音楽配信サービスが主流となるなかで、「2014年8月に渋谷で開業し、現在は新宿、吉祥寺に3店舗を構えるレコード店『HMV record shop』も好調」と覚張室長は話す。その一方で、「『HMVイコール音楽』というイメージによって、音楽に関心がない人の興味を失いたくない」(覚張室長)。HMVとしての再ブランディングが必要と考え、HMV&BOOKSを出店する際にはイベントスペースを設けてトークショーやミニライブを実施するなど、体験型の店舗づくりを意識してきた。

 「本をあまり読まない人にとってはベストセラーしか目に入らないかもしれないが、日比谷コテージのセレクトによって新しいジャンルとの出合いがあればうれしい。リピーターにとって『本を買うなら日比谷コテージ』と指名してもらえる書店にしたい」と覚張室長は意気込む。

店頭では生花店「日比谷花壇」が手がけた、花瓶を使わずにそのまま飾れるブーケ「one bundle」も販売する
店頭では生花店「日比谷花壇」が手がけた、花瓶を使わずにそのまま飾れるブーケ「one bundle」も販売する
ローソンHMVエンタテイメントの覚張正浩事業戦略室長
ローソンHMVエンタテイメントの覚張正浩事業戦略室長

(文/樋口可奈子)

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