2018年3月15日、ネスレ日本は同社のティーマシン「SPECIAL.T(スペシャルティー)」専用ティーカプセルの新シリーズ「SPECIAL.T blended by LUPICIA」を発売した。紅茶やフレーバーティー、ハーブティーなど全6種類で、茶葉の製造販売を行うルピシア(東京都渋谷区)と共同開発している。

「SPECIAL.T blended by LUPICIA」(各10カプセル入り、1000円)。紅茶にさくらんぼのフレーバーをつけた「さくらんぼ」(写真左)、ノンカフェインのルイボスティー「ルイボス ハニー&フルーツ」(写真中央)、ほどよい甘みとコクが特徴の「セイロン」(写真右)など、全6種類を展開

 スペシャルティーは茶葉を封入した独自のカプセルを装填してお茶を抽出するマシン。ネスレ日本が展開する「ネスプレッソ」のお茶バージョンだ。ネスプレッソ等のコーヒーマシンと違う点は、茶葉に合わせて最適な抽出温度をマシンが自動で設定してくれること。紅茶なら高温で、日本茶なら比較的低い温度で抽出するという。2010年に欧米で発売後、2013年から日本でも展開を開始している。

「SPECIAL.T」はネスレ日本のECサイトで取扱い中。カプセルの定期購入を申し込むことでマシンが無料レンタルできるプランもある
「SPECIAL.T」はネスレ日本のECサイトで取扱い中。カプセルの定期購入を申し込むことでマシンが無料レンタルできるプランもある

「日本人好み」の緑茶で売り上げが2倍に

 スペシャルティーは2015年9月に日本茶のカプセルを一新したことをきっかけに、大きくシェアを伸ばした。日本展開を開始した当初は欧米から輸入した茶葉のカプセルを提供しており、日本茶もラインアップしていたが、「日本茶特有の『渋み』や『うまみ』は欧米では支持されないので、欧米人が好むすっきりした味に仕上げていた」とネスレ日本 スペシャル.Tビジネス部の早坂由香利マネージャーは振り返る。日本人が好む日本茶を作りたいと考え、日本茶の製造販売を行う福寿園(京都府木津川市)と共同開発した「京の匠福寿園」シリーズを発売したところ、カプセルの売り上げが伸長。2017年の売り上げは2014年の約2倍になったという。

カプセル購入者の90%以上が日本茶を購入している
カプセル購入者の90%以上が日本茶を購入している

 ネスレ日本によると、スペシャルティーの利用シーンはオフィスが4割、家庭内が6割で、登録ユーザーの約8割が女性。ユーザーの中心は30~40代だ。同社は女性が好むお茶としてフレーバーティーに着目。お茶の専門店として全国160店舗以上を展開するルピシアに声をかけた。

 ルピシアは紅茶だけでなくウーロン茶や日本茶、オリジナルのブレンドティーやフレーバーティーを自社工場で製造している。会員を対象に無料送付している情報誌の発行部数は月間36万部で、会員の約8割が女性だという。まさにスペシャルティーのターゲットと合致しているというわけだ。

ネスレ日本のグンター スピース専務(写真左)とルピシアの森重かをり社長(写真右)
ネスレ日本のグンター スピース専務(写真左)とルピシアの森重かをり社長(写真右)

「湯を沸かさない」ことでシニア市場も開拓

 湯を沸かすことなくボタン一つで好みのお茶がいれられるという特徴は、仕事や家事に忙しい人の「時短」ニーズに対応しているといえる。だが、湯を沸かすというひと手間をカットしたことで開拓できた市場がある。60歳以上のシニア層だ。

 早坂マネージャーは「『京の匠福寿園』シリーズをきっかけに、ユーザーの中心である30~40代の女性が自分の親にすすめることが増えている」と話す。高齢になると、湯を沸かすという行為が手間だけでなく困難に感じることもある。だが、火を使わずに電気ポットを使ってお茶をいれることもできる。スペシャルティーをすすめる理由はどこにあるのか。それについて、同社のグンター スピース専務は「自分が飲んで、おいしいと感じたからではないか」と分析する。

 スピース専務によると、コーヒーマシーン・ティーマシーンともにプレゼント需要も多いというが、「ネスプレッソなどはもともとコーヒーを親しんでいた人にプレゼントするという例が多い」(同氏)。エスプレッソを提供する店に行ったことがある人ならば「マシンがいれるコーヒー」に抵抗がある人も少ないだろう。しかし、お茶をマシンでいれるという認識はあまりない。そこで「飲んでみたらおいしかった」という体験が重要になるのかもしれない。

茶葉を測る必要がないというのも手間を省けるポイント
茶葉を測る必要がないというのも手間を省けるポイント

 スピース専務は「マシンのメンテナンスのため、消費者と直接コミュニケーションを取る必要がある」とし、引き続き通販を中心に展開していくと話す。だが、今後は「体験の場も必要と考えている」(同氏)。無料の体験イベントを行うほか、店頭展開も視野にいれていくという。

(文/樋口可奈子)

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