平成30年間のビューティートレンドの変遷を1人のモデルで再現した
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 資生堂は1987年から、インハウスのヘアメーキャップアーティストがヘアメークのトレンドを調査、分析、予測する「ビューティートレンド研究」を続けている。平成30年間のビューティートレンドの変遷を分析し、公開した。

東京での街頭調査の様子。東京らしさを浮き彫りにするために、上海、ソウル、ニューヨーク、パリでも同様の街頭調査を行っている
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 このトレンド研究は街頭調査をはじめ、世界のファッションショーの現場で得た情報やメディアに露出した内容などを参考にしながら、年に2回、1年半先のトレンドを予測するというもの。目的は、自社のマーケティングや商品開発などに役立てることだ。

鈴木節子氏。資生堂ビューティークリエーションセンター資生堂トップヘアメーキャップアーティスト
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 近年、女性の間で赤い口紅が流行しているが、資生堂では街頭調査の結果からいち早くこれを予測し「12年の年末には『赤い口紅が再燃』という情報をプレスリリースで発信していた」と、トレンド研究のリーダーを務める、資生堂ビューティークリエーションセンタートップヘアメーキャップアーティストの鈴木節子氏は言う。18年10月には、平成30年間のビューティートレンドの変遷を1人のモデルで再現し、1分間の動画「平成ビューティートレンド七変化」を公開した。同社のウェブサイトでは、再現したスタイルの各時代背景と女性の意識と共に、ビューティートレンドについて鈴木氏が解説している。

ヘアメークと世相の関係

 鈴木氏は「トレンド研究の結果を長いスパンで見たとき、世相と女性の装いは相互に作用し合っている可能性があることに気づいた」と言う。例えば、バブル崩壊直前は太くてりりしい眉で口紅の色も濃い。だが、崩壊後の平成不況と呼ばれる1990年代は、細く頼りない眉となり、口紅やチークなどの色も薄めだ。

 こうした化粧の変化について鈴木氏は次のように話す。「女性はどんな化粧をするか『その日の気分』で決めていると思う。その日の気分は、意識せずとも世の中に漂っている空気に影響されているはずだ。その逆も考えられる。赤い口紅を付けてさっそうと歩く女性たちがいる街のほうが、世の中の雰囲気も明るくなるだろう。私たちは化粧文化の研究が専門なので世相との関連については、あくまでも仮説だが、女性のメークは世の中の動きに左右されている可能性は高い。そのことを記録として残すためにも、平成30年間のトレンドの変遷を再現することにした」

平成元~5年(1989~1993年)
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平成6~10年(1994~1998年)
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平成11~15年(1999~2003年)
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平成16~20年(2004~2008年)
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平成21~25年(2009~2013年)
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平成26~30年(2014~2018年)
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今後(2019年~)
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 1989年から2008年までの4つのスタイルを見ると、当時、ファッションリーダーとなった著名人をイメージできる。だが、09年以降のスタイルには、特定の存在がいない。それは、価値観の多様化を象徴する現象と言えるだろう。

観察して兆候を読み取る

 リアリティーのあるトレンド予測は、街頭調査に協力した一般女性のヘアメークを観察することから始まる。東京の街頭調査は、表参道や銀座、原宿などで年2回実施。毎回、20代から30代の女性300人のヘアメークとファッションを調査している。撮影も行い、審美眼を持つヘアメーキャップアーティストが写真を1枚ずつ見ながらマスカラのボリュームやアイラインの引き方、眉の太さやチークの入れ方、口紅の色や質感といったディテールを一つひとつチェックする。プロが長年にわたって一般女性のヘアメークを見続けているからこそ、小さな差異や変化の兆候に気づくことができるのだという。

 「既に主流となっているものを提案しても意味がない。私たちのトレンド予測は、通常の聞き取り調査では出てこないと思う」(鈴木氏)

 ただ、トレンドは年々、予測しにくくなっているそうだ。流行が4~5年単位で移り変わるうえ、多様化しているからだという。「SNSが急速に普及したことで、発売したばかりの新製品と30年前に流行したものを消費者が同時に見る可能性がある。何を新しいと思うかは、その人の価値観に委ねられるようになった」(鈴木氏)

 そんな状況でメーカーができることは何か。資生堂の場合、多様な価値観に対応できる幅広い提案だという。「パーソナライゼーションと多様化がキーワード。例えば赤い口紅も1種類ではなく、さまざまなタイプやスタイルを提案することが重要。SNS映えも意識する必要がある」と鈴木氏は話す。

(文/西山薫=ライター)

※日経クロストレンド 2019年1月18日の記事を再構成