ロブスターロール専門店「LUKE'S(ルークス)」、ベーカリー「GONTRAN CHERRIER(ゴントラン シェリエ)」、「GORILLA COFFEE(ゴリラ コーヒー)」……。ここ数年で日本に上陸した話題の飲食店を次々に手がけているのが、アパレル企業のベイクルーズであるのをご存じだろうか。
ベイクルーズは男性向け、女性向け合わせて約30のアパレルブランドをはじめ、家具ブランドやフィットネス事業などを展開するかたわら、積極的に飲食業態を増やしている。日本未上陸の海外飲食店の発掘に力を入れるほか、カレー、パンケーキ、ハンバーグ、デリなど数多くの業態を手がけ、2016年にはしゃぶしゃぶ専門店もオープンしている。
アパレル企業が飲食店を手がけるのは今や珍しいことではないが、同社のように多数の業態を積極的に展開している企業は珍しいだろう。同社が飲食店事業を始めたきっかけや事業を拡大するに至った経緯について、飲食部門の責任者を務める野田晋作副社長に聞いた。
アパレル店舗の空きフロアの有効活用がきっかけ
――ベイクルーズが飲食を始めたのはいつから?
野田晋作氏(以下、野田): 2000年、新宿駅南口に「ジャーナルスタンダード」というアパレルブランドの路面店をオープンしたのが最初です。店舗は3階建てでしたが、1階をメンズのフロア、2階をレディースのフロアとした場合、3階部分が余ってしまう。何かできないかと考えたとき、米国出張の際によく立ち寄るアメリカンダイナーみたいな店を作ってはどうだろうという話が出て、飲食の1号店として現在の「J.S.BURGERS CAFE(J.S. バーガーズ カフェ)」をオープンしました。ジャーナルスタンダードは米国のアウトドアスタイルを取り入れたセレクトショップだったので、その世界観を補完できるカテゴリーとして、飲食が出てきた形です。
――飲食業を手がけるアパレル企業としては先駆けだったのでは?
野田: 今はほかのアパレル企業でも、ブランドの世界観を生かしたカフェなどを手がけています。家具店をやっているところもある。どこもライフスタイル全体を串で刺したいと考えているのでは?
――2009年にはパンケーキの専門店もオープンした。
野田: J.S.バーガーズ カフェで実績が出せたので、飲食部門の規模を拡大しようと考えました。「J.S. PANCAKE CAFE(J.S. パンケーキ カフェ)」として、いろいろな商業施設に出店しましたが、やはりアパレルの延長線上という枠からは出られず……。大きな転機になったのは、2012年に渋谷駅にオープンしたベーカリー、ゴントラン シェリエ。このブランドで初めて海外のクリエーターとライセンス契約し、本国の商品を展開するだけでなく、共同開発も行いました。クロワッサンが代表的な商品で、全国7店舗で1日に約1万個近く売れているヒットアイテムです。