寒さが一段と厳しくなり、各地で軒並み今季一番の冷え込みを更新している。そんななか、“ぬれた氷の上でも、とにかく滑りにくい”との口コミで、北海道から人気に火がつき話題になっているシューズをご存じだろうか。世界160か国で愛用される米国発のアウトドアブランド「Merrell(メレル)」の「Vibram(ヴィブラム)アークティックグリップ」というアウトソールを搭載したウィンターシューズシリーズだ。

 ヴィブラム アークティックグリップは、メレルがイタリアの老舗ソールメーカー・ヴィブラムとタッグを組んで開発したアウトソールで、ぬれた氷上から氷点下まで安定したグリップ力を発揮する。2016年に発売され、その驚異的なグリップ力がすぐに評判となり、2017年には受注が飛躍的に増えたという。

 でもどうして氷上でも滑りにくいのか、その実力をひも解くとともに、「JUNGLE MOC(ジャングルモック)」や「CHAMELEON(カメレオン)」シリーズなど、創業30年あまりでヒット作を生み続け、アウトドアシューズ界のトップを走り続けられる理由について、日本でメレルを展開する丸紅フットウェア・ブランドマーケティング事業部の田中祐介氏に話を聞いた。(価格はすべて税別)

シロクマの肉球がお手本? 話題のウィンターシューズの実力は

 ヴィブラム アークティックグリップは、その表面が特殊な起毛素材でできており、ぬれた氷上でも滑りにくい。また、周りにー20℃まで硬化しないラバーのため、氷点下でも安定したグリップ力を発揮する。シリーズが発売された2016年には、「凍った路面でも安心して歩ける」「滑りにくくて歩きやすい」といった口コミが北海道から瞬く間に広がった。

 「お客様から大きな反響を頂き、メディアにも取り上げられたためさらなる成長がみられた。今シーズンは都心部でも売れ行きが好調」(田中氏)だという。

「THERMO ROGUE MID GORE-TEX(サーモ ローグ ミッド ゴアテックス)」(2万7000円)
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 メレルとヴィブラム社は2018年冬、ヴィブラム アークティックグリップの進化版「VIBRAM ARCTIC GRIP DURA(ヴィブラム アークティックグリップ デュラ)」を発表した。凍った路面にのみ強かったモデルを、雪道にも対応できるようにパワーアップ。

雪が詰まりにくいように配置した突起は、シロクマの肉球をモチーフにしたという
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 同年10月にはヴィブラム アークティックグリップ デュラ」を搭載した「サーモ ローグ ミッド ゴアテックス」を発売し、履き心地の良さとグリップ力の高さが評価され、ミュンヘンで開催された世界最大のスポーツ用品見本市「ISPO」において金賞を受賞するなど、業界で話題になった。

 中綿を封入することで高い保温性も備え、冷えやすい足元を守る。アッパーにはゴアテックスの防水透湿素材を内蔵した完全防水仕様で、水の侵入もシャットアウトする。溶けた雪の上はもちろん、雨天時にも対応し、まさに“向かうところ敵なし”といったウィンターシューズだ。

靴裏の突起が地面をしっかりとらえ、歩行に安定感を生む
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 筆者もこの驚異のグリップ力を体感した。溶けはじめた氷の上で、おそるおそるキュキュッとわざと足元を滑らせてみる。が、安定感がありびくともしない。同じ状況で履いてきたスニーカーに履き替えたが、つるつると足元をとられ、手すりにつかまっていないと、とてもじゃないが歩けない状態だった。

 メレルは自社でもアウトソールや防水素材を開発しているが、ヴィブラム アークティックグリップシリーズはヴィブラムと共同開発したり、ゴアテックスともパートナーカンパニーとして積極的にタッグを組んだりしている。

 自社開発できる力を持ちながらも他社と手を取り合う理由について田中氏は、「テクノロジーの独自性や先進性を高め、ほかのシューズメーカーとの差別化を図るため」と話す。

 実際にアークティックグリップ搭載のウィンターシューズは、2018年度も驚異的な成長をみせているといい、「“ウィンターシューズ=メレル”という印象をさらに強化するべく、次年度に向けてもすでに計画が始まっている」(田中氏)。

 

創業者はカウボーイブーツ職人

 メレルは、幼少のころからアウトドアに親しんでいたランディ・メレル氏が、1981年に米国・ユタ州で創業した(現在はミシガン州に本社を置く)。もともとカスタムメイドのカウボーイブーツの職人であったメレル氏が、「完ぺきなハイキングシューズを作りたい」という夢を掲げ、一足のハイキングシューズを作った。これが後にバックパッカーマガジンで“全米で最も機能的で快適な靴”に選出され、大きな話題となる。

(左)創業者のランディ・メレル氏。(右)当時、機能とデザインが画期的だったメレル初のクライミングシューズ
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 1988年には、かかとを覆うアウトソールや鮮やかなカラーリングが目を引くクライミングシューズ「フラッシュダンス」を発表。これまでになかった機能性とデザインで人気を集めていく。

 1998年になると、日本でもヒットした「ジャングルモック」が誕生した。オフィスからトレイルまで履ける“アフタースポーツシューズ”という新しい概念を打ち出したジャングルモック。脱ぎ履きがしやすい靴ひものないスリッポン型や疲れにくい独自のアウトソールが特徴で、一度履いたらもうほかのシューズには戻れなくなるほどの卓越した履き心地のよさを生み出し、ファンが急増した。

 20年経った今でもその人気は色あせることなく、「累計販売は1700万足を越える」(田中氏)という。ちょっとしたハイキング、タウンユース、トラベルシューズとして、時代が変わってもなお世界中で愛され続ける、メレル不動の代表作となった。

「ジャングル モック」(1万2000円)。サイドのストレッチバンドとかかと部分のループでラクに着脱できる
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2019年2月発売予定の「JUNGLE MOC XX AC+(ジャングル モック ダブルエックス エーシープラス)」(1万6800円)
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