「仕事をしたいけど、喫茶店が空いていない」「マンツーマンの英会話教室を請け負いたいけれど、カフェでは雑音が大きくて集中できない」――。

 こんな悩みを抱える人に役立つサービスが東京・渋谷を中心に広がりそうだ。時間貸しのシェアスペース事業を展開するコインスペース(東京都港区)は、東京・渋谷のスクランブル交差点に面した商業施設「QFRONT」の8階に入居する居酒屋「ぷん楽」と提携。2月1日から同店にある座席のうち最大164席を、午前10時から午後3時まで10分単位で借りられる空きスペース「コインスペース」として運営を始める。

 同店は、「渋谷マークシティWEST」の4階にある「しぶやクリエーションスクエア」店に続く2店舗目となる。コインスペースは今後、渋谷区を中心に年内100店舗の開拓を目指す。

 コインスペースは場所や物などの空き時間を有効活用する「シェアリングエコノミー」サービスの一種だ。サービスに参加する飲食店などの座席を、ネットで10分単位で予約して借りられる。無料で使えるWi-Fiや一部の席では電源などがそろっているため、仕事にも利用できる。「既存店舗では英会話のレッスンや近隣で働く人の休憩スペースとしても利用されている。安価に利用できるため、喫茶店などの代わりに利用する人が多い」(コインスペースの佐藤悠太社長)という。例えば、ぷん楽の利用料金は15分100円で、営業時間をめいっぱい利用したとしても1000円で済む。

スマートフォンでコインスペースのウェブサイトを訪れて座席を予約する
スマートフォンでコインスペースのウェブサイトを訪れて座席を予約する

 コインスペースを利用する場合、スマートフォンでコインスペースのウェブサイトを訪れて、利用店舗や来店人数、利用時間を指定すると、予約可能な座席が表示される。座席を指定後に、クレジットカードで決済をする。その後、予約した時間に店舗を訪れて、受け付けで予約完了画面を提示して利用する。

参加店舗に予約管理システム提供

 一方、コインスペースの参加店舗は、店舗の空き時間を貸し出すことで新たな収益を得られる。利用された料金をコインスペースと店舗で折半するレベニューシェアモデルとなっており、得られる収益の比率は、双方で50%ずつが基本。ただし、コインスペース側でWi-Fiを店舗に導入するなど、システム整備をする必要がある場合は、契約状況に応じて比率が変動する。受け付けの担当者は店舗側で用意する必要があるが、将来的には無人化を実現していく。

店舗向けには座席の予約管理システムを提供
店舗向けには座席の予約管理システムを提供

 コインスペースはぷん楽との提携を機に、本格的に店舗拡大に乗り出す。店舗開拓の開始に合わせて、新たに店舗向けの座席予約管理システムの提供を始めた。店舗側はコインスペースに参加する場合、この予約管理システムを利用して、店舗情報やコインスペースとして提供する座席を登録する。管理画面では予約人数や日別の売り上げ、どの座席がいつ利用されたのかといった傾向をデータで分析できる。

 また、店舗拡大に合わせて、個人事業主などの法人格向けに固定料金で利用できる法人プランの提供を始めた。しぶやクリエーションスクエア店とぷん楽の2店舗のオープンスペースが使いたい放題で月額1万5000円の「ライトプラン」と、オープンスペースに加えて個室も自由に使える月額4万円の「スタンダードプラン」を用意する。

 今後、店舗数の増加に合わせて、「一般の消費者向けにも固定料金で利用できるプランの提供を検討していく」(佐藤社長)予定だ。

(文/中村 勇介=日経デジタルマーケティング)

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