いよいよバレンタインデーまであと数週間。2019年のバレンタイン商戦でもっとも注目をされるのは、“第4のチョコ”と呼ばれる「ルビーチョコレート」だろう (関連記事「ネット騒がす2つの“第4のチョコ” ルビーとブロンド」)。
ルビーチョコレートは天然のピンク色とベリーのような酸味が特徴。スイスに本社を置くチョコレートメーカーのバリー・カレボーが開発し、2017年9月に中国・上海で発表された。日本では2018年1月にネスレ日本が6カ月間の独占販売契約を締結し、「キットカット ショコラトリー サブリム ルビー」として発売した。
2018年9月には、ルビーチョコレートを使った菓子を取り扱うブランドが一気に拡大。コンビニ大手のローソンの代表的なスイーツ商品「プレミアムロールケーキ」に、ルビーチョコレートを使ったフレーバーが登場。また、ルビーチョコレートを使ったクリスマスケーキも各社で販売されるなど、大きな話題を集めた (関連記事「“第4のチョコ”が一気に拡大 ローソンのロールケーキも」 「平成最後のクリスマスケーキ 注目は『ヘクセン』と『ルビー』 )。
ここ数年、秋冬のイベントとしてハロウィーンが盛り上がりを見せる一方、バレンタインの話題は少なかった。しかし、バリー・カレボージャパン グルメセールスダイレクターの押切一浩氏は「ルビーチョコレートが発売されたことで、市場全体が盛り上がっているように感じる」と今回のバレンタインにも期待を寄せる。同社の日本における業務用チョコレートの売り上げは非公表だが、「ルビーチョコレートによって、売り上げが約20%伸びた」と押切氏は説明する。
バレンタイン商戦でルビーチョコの認知向上に期待
今回発表されたバレンタイン向けの商品のなかには、創業100年以上の老舗和菓子店「ぎんざ空也」が手がける「ルビーチョコレートあん」を使った「つきルビーチョコレート」や、兵庫県の酒造場によるルビーチョコレートのリキュール「小鼓 チョコレートリキュール モンテオエステ ロゼ」などの変わり種も。
また、話題性の高いルビーチョコレートを人気定番品の新フレーバーとして採用したのが、みなとみらいに本店を構えるショコラティエ「バニラビーンズ」。同店の代表的な商品「ショーコラ」は年間200万個を売り上げる人気商品。バタークッキーでチョコレートをサンドしたものだが、間に挟むチョコレートをルビーチョコレートをベースにした「ショーコラ・フランボワーズ」を発売した。同店を運営するチョコレートデザインの担当者は「ショーコラ・フランボワーズの今シーズンの目標は20万個。ショーコラ全体で売り上げの10%増を目指す」と意気込む。
同社のパスカル・ムルメステール社長は「日本のルビーチョコレートの売り上げは世界の売り上げをリードしている」と話す。控えめな甘さや酸味などの日本人好みの味や「インスタ映え」するビジュアルがその要因だというが、現時点ではまだ一部の感度の高い人やチョコレートが好きな人が売り上げを支えているというのが現状だろう。ルビーチョコレートを使った新商品がチョコレート専門店だけでなく百貨店、量販店などで幅広く取り扱われるようになれば、ルビーチョコレートの認知は一気に広がる。ルビーチョコレートが日本で本格展開を始めてから初めて迎えるバレンタイン商戦は、その絶好の機会だ。
ムルメステール社長は「バレンタインデーというチョコレート業界においてもっとも重要なイベントで、日本中全ての人にルビーチョコレートを食べてもらいたい」と抱負を語った。
キットカットは「火山チョコ」で勝負
一方、18年1月に、当時発表されて間もないルビーチョコレートをいち早く商品化したのがネスレ日本。キットカット ショコラトリー サブリム ルビーの名で発売された商品は、18年のバレンタインシーズンに大きな注目を浴びた。
ネスレ日本コンフェクショナリー事業本部マーケティング部の竹内雄二部長は、サブリム ルビーについて「一時的な大ヒットというよりも、ロングテールで売れ続けている商品」と話す。これまでショコラトリーの売り上げのピークはバレンタインデーのある2月とホワイトデーのある3月だったが、 サブリム ルビー投入後は安定して好調な売れ行きが続いているという。
19年もサブリム ルビーの販売は継続。新商品として、フィリピンやバヌアツなどの火山島で生育したカカオを使ったチョコレート「キットカット サブリム ボルカニック」を発売した。同商品は世界総生産量のわずか0.2%という希少なカカオを使用しており、ビターな味わいが特徴。話題性のある「火山チョコ」を投入することで、チョコレート市場をさらに盛り上げる狙いだ。
(文/樋口可奈子)