トレンド・フォーカス

eスポーツで、ゲームは「プロ野球」になれるか

Gzブレイン・浜村弘一社長に聞く

2017年12月27日

家庭用ゲーム機を主導してきた日本がeスポーツ後進国となってしまった理由とは?

――据え置き型のゲーム機は、任天堂、ソニー・インタラクティブエンタテインメントなど日本のメーカーが牽引しているのに、日本でeスポーツへの動きが鈍いのはなぜなんでしょう?

浜村氏: プレーヤーが競い合うeスポーツは、インターネットをベースにしたPCゲームの文化で熟成されてきたものなんです。テロリストと治安部隊の戦いをテーマにした『Counter Strike』や、ファンタジー世界でチームバトルができる『League of Legends』など、eスポーツで人気のタイトルは家庭用ゲーム機では遊べません。

 一方、日本ではPCでゲームをするユーザーは少数派。最近PCゲームのユーザーもだいぶ増えてきたとはいえ、日本では家庭用ゲーム機があまりにも強かったんですね。

 人と競うものよりも、RPG(ロール・プレイング・ゲーム)を中心としたストーリーを追うタイプのゲームが人気だったことも、日本がeスポーツに乗り遅れたことに少なからず影響していると思います。

 あとは、賞金をめぐる法律の問題抜きには語れないでしょう。eスポーツって、最初は参加者がお金を出し合い、優勝したプレーヤーに賞金を出すといったユーザー同士の集まりから始まっているんです。ですが、日本では賭博罪に抵触するので、それができませんでした。

 では、ゲームセンターなどが賞金を用意して大会をやろうとすると、今度は風営法の問題が出てきます。

 ゲームメーカーが賞金を出して大会をしようとしても、今度は景品表示法に引っかかる可能性がある。自社の商品=ゲームを買ってもらうために賞金を出す、つまりは景品と見なされてしまうわけです。

――賞金の出所が問題ということですか?

浜村氏: その通りです。賞金付きの大会を国内で開くことに関しては、あらゆるケースで法的に縛られている状態だったんです。一方で、海外ではeスポーツがどんどん盛んになり、プロといわれる人たちは渡航して戦うようになりました。海外で勝つには厳しいトレーニングが必要です。そのための生活費を稼がなければならないし、ましてや渡航するとなると相当なコストがかかります。だから、日本ではごく一部の人しかプロとしての活動ができなかった。これも、eスポーツが育たなかった背景として大きいと思いますよ。

――AMDの先日の発表では、そうした法的な問題がクリアできそうだということでした(関連記事:デジタルメディア協会がeスポーツ大会の賞金を支援)。法律が変わったわけではないですよね?

浜村氏:  法律が変わるのを待つのではなく、法解釈で対処しようということです。例えば、ゴルフではウェアや用具のメーカーが賞金を出して大会を開いています。これは「プロ」という資格がきちんと認定されているからです。

 ゴルフの一部の大会は、プロもアマチュアも参加できますが、アマチュアが優勝しても賞金はもらえません。プロはあらかじめ機材などをそろえて仕事として競技に挑んでいるので「賞金につられてスポンサーの賞品を買う」わけではない――そこを明確に区別することで、景品表示法の違反には当たらないことになるんです。

 ゲームも同じように「プロ」宣言をすればよかったんですが、「プロ」と呼ぶ根拠がとても分かりにくく、公的に認められづらいものがありました。そこで、JOCへの加入を目指すeスポーツの団体を作り、技術があって、高度なパフォーマンスで観客を魅了できるプレーヤーにプロライセンスを与えようということになったんです(関連記事:プロライセンス発行開始 eスポーツは盛り上がるのか) 。

12月に行われた「闘会議2018」の発表会で、来春にもeスポーツ新団体を発足し、プロライセンスを発行することが発表された(写真/稲垣宗彦)
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 ゴルフをはじめとするほかのプロスポーツと同じような体制をゲームでも築くことで、消費者庁も区別がつけやすくなり、IPホルダーのメーカーが賞金を出す環境が生まれてくる。国内のメーカーが賞金を出して大きな大会が開かれるようになれば、日本の選手の底上げが期待できます。

 オリンピックのような大きな場で日本人が活躍し、金メダルを獲得するなんていうことにでもなれば、世間の注目度は加速度的に上がっていくでしょう。eスポーツを観戦する側に視聴習慣が根付いて広告効果が期待できるようになれば、国内の有名企業が大会に賞金を出すようになるはずです。

 風営法と賭博罪に関しては、法律が変わらない限り切り抜けるのは難しいですが、景品表示法をクリアしてメーカー主催の大会が開けるようになるだけでも大きな突破口となりえます。

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