働き方の常識を疑うことが大切

 基調講演の後半は2人のゲストが登壇し、青野社長と幸せな働き方について議論を交わした。

 1人目のゲストはワンキャリア(東京・渋谷)の執行役員で、『転職の思考法』を執筆した北野唯我氏。北野氏は「日本では転職にかかる費用的コストも心理的コストも高すぎるため、転職がなかなか進まない」としながらも、「生き生きと働くには、いつでも転職できるというカードを持つことが大事」と語った。これには青野社長も賛同。「会社が変わるように働きかけるには『変えてくれないなら辞めますよ』という姿勢を見せるのは有効。人手不足の今、強いカードになる」と応じた。

1人目のゲストは北野唯我氏。著書『転職の思考法』を題材に青野社長と語り合った
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 2人目のゲストは、福岡県春日市に拠点を置き、マンションやアパートといった共同住宅の共用部の清掃を手掛ける会社、お掃除でつくるやさしい未来の前田雅史社長。同社の特徴は75人のスタッフのうち4人を除いて女性で、かつその9割以上が母親だということ。子育ての合間に作った2時間程度で清掃業務を行う女性が多いという。しかも前田社長は「清掃先に子供を連れていってもいいと言っている」。これには青野社長も驚いたが、前田社長は「母親が掃除の仕事をしていると、たいていの子供は手伝う。お母さんと子供が掃除した場所には住民もゴミを捨てない。何ら問題ありません」と語った。

2人目のゲストはお掃除でつくるやさしい未来の前田雅史社長
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 また、オフィスは春日市にしかないにもかかわらず、稼働地域は仙台、東大阪など全国11地域で700棟のマンション/アパートと契約していることも同社の特徴だ。遠く離れた街にある共同住宅からでも、依頼があれば現地で清掃スタッフを雇うなどして業務を拡大してきた。大半は営業所がない地域だが、「クラウドがあれば距離は関係ない」(前田社長)。

 同社では、遠く離れたスタッフとつながるために、サイボウズの業務アプリ構築プラットフォーム「kintone」を導入しているという。「営業所がない地域ではスタッフは清掃先に単独で直行、直帰になるため、孤独になりがち。すると、掃除の質も下がる。kintoneでスタッフ同士がつながり、お互いに仕事をしていることが分かれば、遠く離れていても孤独を感じにくい」と前田社長は説明する。

前田社長の取り組みには青野社長も驚いていた
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 青野社長と前田社長の共通点は、社員一人一人のニーズに合った働き方を模索している点だ。前田社長は「個々の子供の状況や家庭の状況はその時々で変化するので、母親がずっと同じように働き続けるのは難しい。こうあるべきという形に(働き方は)はまらない。自分たちが思っている常識を疑うことが大切」と結んだ。

(文/平野亜矢=日経トレンディネット)