スマートフォン向けゲームなどを手がけるグリーとアミューズメント施設運営などを手がけるアドアーズは、VR(仮想現実)を利用したアトラクションが楽しめる施設「VR PARK TOKYO」を2016年12月16日にオープンした。どんなゲームが楽しめるのか、オープン前に体験してきた。

 VRを使ったアミューズメント施設には、今年10月中旬までの期間限定で営業していたナムコの「VR ZONE Project i Can」、VR空間を歩き回ってプレーするセガ・ライブクリエイションの「ZERO LATENCY VR」などがあるが、これらはいずれも東京・お台場にあり、都心からは少し離れている(関連記事:怖さで絶叫、膝はガクガク、ナムコのVR施設が楽しい!ゾンビを撃ちまくれ! 新VRアトラクションがオープン)。今回オープンしたVR PARK TOKYOは、東京・渋谷駅に近いアミューズメント施設の4階と、気軽に行ける場所にある。

 VR PARK TOKYOは、323平方メートルのスペースに、野球盤やお化け退治などを題材にしたVRゲームが6種類並ぶ。12月下旬~2017年1月初旬には、バンジージャンプを仮想体験できるゲームも追加され、全部で7種類になる予定だ。いずれのゲームもヘッドマウントディスプレー(HMD)を装着し、1~4人で体験する。料金は1人で利用する場合は3300円、2人以上で利用する場合は1人につき2900円で、70分間遊び放題。各日とも10時30分から22時30分までを10の枠に分け、1枠の定員は30人、70分ごとの完全入れ替え制にしている。

VRを“脱ゲームセンター”のコンテンツに

 VR PARK TOKYOは、グリーとアドアーズの協業によって実現した。アドアーズはゲームセンターなどアミューズメント施設の運営を行っているが、ゲームセンターの集客は低下傾向にある。そこで同社では、既存の店舗の一部をカラオケやカフェ、外貨両替所などに業態変化させている。12月14日に開催された発表会で、アドアーズの上原聖司社長は「約1年前からVRを使った施設を構想していた。“脱ゲームセンター”という課題のなかで、VRは有力コンテンツとして期待している」と述べた。

 一方、スマホ向けゲームなどを手がけているグリーは、次の柱となる事業としてVRに積極的に投資している。しかし現在、本格的なVRゲームを楽しむには高価な専用ヘッドマウントディスプレー(HMD)、高性能なパソコン、ある程度広い場所などが必要で、一般家庭にすぐ普及するとは考えにくい。

 例えば、「VR PARK TOKYO」で主に使われているHMD「HTC VIVE」は9万9800円で、VRゲームを動かせるパソコンは20万円クラスになる。2016年はVR元年と呼ばれるが、こうした高性能なVR用HMDやパソコンを所有しているユーザーはまだ少なく、市場としては小さい。アミューズメント施設向けのVRコンテンツ開発はそれよりもビジネス面で期待でき、VRを体験できる場を増やして市場を盛り上げることにつながる。

 グリー取締役執行役員の荒木英士氏は「ここでは誰でも気軽に立ち寄れて、手ごろな価格でVRを楽しめる。こうした場所が増えれば、多くの人がVRを体験できるようになり、VR市場が広がることにつながる」と期待を述べた。脱ゲームセンターを目指すアドアーズと、VR市場を広げたいグリーの思惑が一致した形だ。

 アドアーズは首都圏を中心に全国に店舗を展開し、立地のよい施設を多数持っている。グリーとアドアーズでは「VR PARK TOKYO」の反応を見て、今後はそうした他の店舗にもVRコンテンツを展開していく意向だ。また将来的にはアジア圏や北米など海外市場への展開も視野に入れているという。

まずは超高層ビルでの戦闘を体験!

 VR PARK TOKYOを利用するには、Webサイトから日時を指定して予約する。当日受け付け枠やキャンセル待ちの枠もある。70分間で遊べるのは3~4つのアトラクションということなので、あらかじめどのアトラクションを遊びたいのか優先順位を考えておくといいだろう。入場特典としてフリードリンクサービスやゲームクーポンが付く。なお、13歳未満は入場可能だが、アトラクションは体験できない。

 オープン時のVRアトラクションは6種類。グリーのほかにPDトウキョウ、メディアフロント・ジャパン、ハシラス、ダイナモアミューズメントが手がけるオリジナルゲームで、ここでしか楽しめないという。

 最初に試した「DIVE HARD VR」(メディアフロント・ジャパン)は、迫る敵を銃で倒しつつ、超高層ビルの屋上から突き出た鉄骨の先まで歩き、ヘリコプターからぶら下がった縄ばしごにつかまって脱出するというもの。HMDとコントローラーを装着して説明を受けたら、ゲームスタートだ。エレベーターでビルを昇ってスタート地点に立つが、いきなり超高層ビルの屋上で目の前に細い鉄骨があるだけという状態だ。さらに送風機で風が送られてきて、本当に超高層ビルの屋上に立っている気がしてくる。立っているだけで怖い。

超高層ビルの上で敵を倒してヘリコプターに乗り込む「DIVE HARD VR」。設備は2つあるが、1人で体験するものだ
高所体験はVRアトラクションの定番だ。CGだと分かっていても本能が拒否するのか、足がすくんでなかなか動かない

 ゲーム自体はそれほど難しくなく敵は簡単に倒せた。しかしこのアトラクションはそこからが本番。細い鉄骨の上を歩いて、制限時間までにヘリコプターの縄ばしごまでたどりつかないといけない。しかも鉄骨の上にも、虫のような敵が降ってくるので、自然と足元を見ることになる。CGだと分かっていても足はすくむ。ちょっとずつ歩いてなんとかヘリコプターにたどりつき、脱出できたが没入感はなかなかのものだった。

動く魔法のじゅうたんで飛行体験!

 このほかにも、お化けを退治するシューティングゲーム『協力! GHOST ATTACKERS VR』(グリー)、360動画でホラー映像を見る『体感ホラー VR』(ダイナモアミューズメント)などを体験したが、面白かったのは魔法のじゅうたんに乗って冒険する『ソロモンカーペット VR』(ハシラス)だ。

 HMDとコントローラーを装着してじゅうたんに乗り、モンスターを倒していくというもの。実際に足場が揺れ、さらに送風機から風が身体に当たることで、本当にじゅうたんで空を飛んでいるような浮遊感やスピード感が味わえた。高速なジェットコースターに乗っている感覚に近い。2人で乗り、協力してプレーできるので、友人同氏やカップルで楽しむのによさそうだ。このアトラクションは、MSIの背負えるVR用パソコン「VR One」を使うため、動き回りやすいのも特徴だった(関連記事:これからはVRも仕事もMSIの背負えるパソコンで!【TGS2016】)。

広いカーペットに乗って飛行する「ソロモンカーペット VR」。飛行しながら、手にしたコントローラーで敵を倒して進む
「ソロモンカーペット VR」は1人でもプレーできるが、2人で協力プレーをするとさらに楽しめそうだ
お化けを退治するシューティングゲーム『協力!GHOST ATTACKERS VR』。コントローラーは、HTC VIVEのものに銃の形をした持ち手を付けたもの。1人でも2人でもプレーできる
野球盤を題材にした「対戦!ハチャメチャスタジアムVR」。1人でも2人でもプレーでき、2人の場合は投げる側と打つ側とで対戦する
野球盤を題材にした「対戦!ハチャメチャスタジアムVR」。1人でも2人でもプレーでき、2人の場合は投げる側と打つ側とで対戦する

 剣と盾と魔法でモンスターと戦う『CIRCLE Of SAVIORS BEGINNERS』(PDトウキョウ)は、遊んでいる模様を撮影してモニター上でゲーム内のCGと合成して見せてくれる仕組みが面白い。プレーしている本人だけでなく、周囲の人もそれを見て楽しめる。VR PARK TOKYO内のほか、アドアーズ渋谷店の1階にも設置されていて、そちらの方が完全版。プレー時間は変わらないがすべてのアイテムや魔法を使えるそうだ。

「CIRCLE Of SAVIORS」は、遊んでいる模様を撮影して、ゲーム内のCGと合成する仕組みを体験できる。実演したのは、アクション女優の辻彩加さん。さすがに剣さばきの切れが違う……
「CIRCLE Of SAVIORS」は、遊んでいる模様を撮影して、ゲーム内のCGと合成する仕組みを体験できる。実演したのは、アクション女優の辻彩加さん。さすがに剣さばきの切れが違う……
1人プレー用だが、ほかの人は横に設置されたモニターでプレーの模様を楽しめる

 1月上旬設置予定で残念ながら体験できなかったが、注目なのが「バンジージャンプVR(仮)」だ。安全帯で固定して空中につるされた状態で、バンジージャンプを仮想体験できるというもの。アドアーズ渋谷店の階段吹き抜けに設置される予定で、かなり怖い高所体験ができそうだ。

「バンジージャンプVR(仮)」は、奥に見える階段吹き抜け部分に設置される予定
「バンジージャンプVR(仮)」は、奥に見える階段吹き抜け部分に設置される予定

複数人で簡単に遊べるのが魅力

 ナムコのVR ZONE Project i Canに比べ、VR PARK TOKYOは複数人数で協力プレーや対戦プレーができるアトラクションを中心にしていることが特徴だ。どのアトラクションも、係員がHMDの装着を手伝ってくれてゲーム中も指示を出してくれるので、操作に戸惑うこともなかった。また、どれも没入感は高いが、ゲームとしての難易度は低めで、気楽に遊べた。5~10分ほどの短時間で終わり、疲れやVR酔いを感じることもなかった。ゲーム性よりもVR体験を重視した作りで、ゲームを普段やらない人やVRに不慣れな人でも十分楽しめるだろう。料金は高く感じるが、友人同士で楽しんだり、カップルのデートスポットなどに良さそうだ。

(文/湯浅英夫=IT・家電ジャーナリスト)

この記事をいいね!する