もし僕らがアニメの仕事をやっていたら……

――デビューを果たして注目を集めた伊達杏子ですが、大きな成功を収めるには至りませんでした。

堀社長:本当は、伊達杏子はホリプロの35周年パーティーで披露するつもりで作り始めたのですが、そうした厳しい開発状況でしたから最も肝心な「動くCG」がなかなか出来上がらなかった。モデルが完成し、ラジオのレギュラー番組などを展開して話題となって。世界中から取材が来たのですが、肝心の“モノ”がないという状況が続いてしまって。完成した時には風がやんでいましたね。

 最大の失敗は、やはり「人間を作ろうとしてしまった」ことだと思います。もし僕らがアニメの仕事をやっていたら、キャラクターにしていたでしょう。

――なぜ、人間に近づける必要があったのでしょう?

堀社長:「食べない、死なない、年を取らないタレントを作ろう」と思ったので、どうしても人間に近づけたかったんです。

 そしてもう1つ、私は「人間のメリットをすべて融合すると、完璧な人間が生まれるのではないか?」という仮説を持っていました。タレントになる上で、アイドルになるには容姿で選ばれることが多いのですが、世の中には声がものすごくかわいい人もいれば、踊りがすごくうまい人もいる。

 そこで伊達杏子を作るにあたっては、踊りはニューヨークのプロのダンサーにモーションキャプチャーでデータを取ってもらうなど、メリットを融合して完璧なものを作ろうとしました。ですが結果それはできなくて、「人間より優れているものはない」ということで終わった、と。

 現在は伊達杏子のようなCGを自宅のパソコンで作れるようになりましたし、洋服や髪の毛の自然な動きを実現するソフトウエアも、安価かつ簡単に利用できるようになっている。そうしたことが、今のVTuberを生む土壌になったのだと思います。