前例がなかった3DCGでアイドルを作る苦労

――20年以上も昔の当時、3DCGでキャラクターを作り、動かすというのは非常に大変だったと思います。

堀社長:人物像を作り上げるのと並行して、キャラクターをモデリングし、モーションキャプチャーで動きを付けて映像を作る作業を進めていったのですが、これが大変でした。当時モーションキャプチャーは、非常に大きいスタジオにしかありませんでしたし、センサー数も限られていました。また、CGをプログラムで動作させるには、シリコングラフィックスのコンピューターが50~60台必要で、1人のCGを動かすのに50人ものエンジニアたちが夜を徹して作業している状態だったんです。

 また当時は技術的課題も多く、現在のように髪の毛をスムーズに動かすソフトウエアや技術がないので、髪の毛が長いと動きが気持ち悪かった。だから髪形はショートカットにして、それならいっそスポーツ万能で、横田基地に近いからダンスを外国人に習ったという設定にする……など、技術的な制限が出てくるとプロフィルにそれを反映させていくような状況でしたね。

1996年にホリプロが世に送り出したバーチャルアイドル「伊達杏子」

 一番大変なのは顔の表情でした。とにかく人間に近づけすぎたため、プログラマーが顔をきれいにしようとするあまり、顔の比率がどんどん伸びていって人形みたいな顔になってしまう。だからといって、私が「かわいくしてよ」と言っても、かわいくするにはどうすればいいかといったデータがない。こちらは手で絵を描いている感覚で言っているのですが、それをCGで実現するのにまた2カ月かかるとか……そういう状況です。結果、顔を笑わせるのに半年かかりました。

 自然に歩いたり、踊ったりさせるのも一苦労でした。とにかく空中を動いているような感じで、重量感が出ない。技術ではどうにも解決できなかったので、エフェクトでごまかすとか、踊っている時は白バックにして上半身だけを映して足元を映さないとかして、自然に見せる工夫をしていました。

 モデルが完成してから何をやらせるかも課題で、そこに1度かかわると非常に大変だということも思い知りました。インタビュー取材の依頼も多くありましたが、実際に答えるのは私しかいない。事前にインタビュー内容をもらって齟齬(そご)がないよう資料を作り、必死に書いて……ということを繰り返していったら、資料がものすごく厚くなって。これは続けたら死ぬぞと(笑)。