数年前から「ジェネリック家電」というキーワードが注目を集めている。このカテゴリーに入る家電は、現在も様々なジャンルで好調に売れている。

アイリスオーヤマのコードレスアイロン「SIR-02A」。税込み3000円弱で売られている
アイリスオーヤマのコードレスアイロン「SIR-02A」。税込み3000円弱で売られている

 「ジェネリック家電」は、同じ主成分ながら新薬と比べて低価格な「ジェネリック医薬品」から着想された造語。大手以外の家電メーカーが、品質を保ちつつ機能をシンプルにして価格を抑えて作った格安家電全般を指す。明確な定義はないが、いわゆる「安かろう悪かろう」な粗悪品とは違い、基本的な品質は大手メーカーと大差ない。

 一般的に知られているメーカーとしては、山善や小泉成器、トヨトミ、ツインバード、アイスリオーヤマなどが挙げられる。製品を企画・設計し、製造は委託工場にまかせるというファブレス方式を採用したり、世代交代により安くなった部品を小ロットで仕入れて組み合わせたりと様々な工夫を凝らすことで評価を高めている。

 ジェネリック家電という言葉自体は2013年以降に知られるようになったが、こうした業態のメーカーは2010年頃から好評を博してきた。

ヨドバシカメラの電子レンジコーナー。左のジェネリック家電は、右の大手メーカー(シャープ)と比べて大幅に安い値が付けられている
ヨドバシカメラの電子レンジコーナー。左のジェネリック家電は、右の大手メーカー(シャープ)と比べて大幅に安い値が付けられている

ネット通販では売れ行き不振?

 最近では、単純なコストパフォーマンスだけでなく、独自の付加価値を搭載することで売り上げを伸ばしているジェネリック家電も少なくない。2014年秋には、障害物検知の精度を高めた2万円台の格安お掃除ロボ「ラクリート CZ-907」(シー・シー・ピー)や、税込み5000円弱ながら一般的なドライヤーより3割以上大きな風が起こせる「バックステージモンスター KCD-W700」(小泉成器)などがヒットを飛ばしている。

「ジェネリック家電の注目度が高まるとともに、そのカテゴリ全体の製品品質も上がっています。そのため、安さと品質だけでは他商品に埋もれやすくなり、独自の武器を持ったモデルが目立つようになっていきました」(ノジマ イオンモール幕張新都心店)

小泉成器「バックステージモンスター KCD-W700」
小泉成器「バックステージモンスター KCD-W700」

 格安で高品質、かつ独自の武器を備えたジェネリック家電はカテゴリーの枠を超えてどこでも売れるヒット作になることも珍しくない。しかし、目立った武器のない地味な製品はリアル店舗で売れていても、ネット通販ではさっぱりということもあるようだ。

「ジェネリック家電は全般的に知名度が低いため、ネット通販サイトで大きく取り上げられたり、売れ筋ランキングで上位にランクインすることはあまりありません。そのためリアル店舗の売り場に来て、『こんな安くてよい製品があるんだ』と驚く人がけっこういます。店舗で製品をまとめ買いする際、全体の予算との兼ね合いから、地味だけど高品質なジェネリック家電が最終的に選ばれるわけです」(大手家電量販店)。

 逆にいえば、ジェネリック家電はネット通販では無名でもリアル店舗では売れ筋というパターンが珍しくない。いわば「ネットでは見つけられないコスパ高製品」といえそうだ。

(文/古田雄介)

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