当初、iPhoneの写真は商業印刷に堪えないのではないかと思った

 『ガザ』の出版にいたるきっかけとなったのが、清田さんのフェイスブックだ。編集を担当したポプラ社の松沢清美さんが清田さんのフェイスブックに掲載されていた写真を見て、「写真絵本にして多くの子どもたちに見てもらいたい」と直感。清田さんに出版を提案した。

 出版が決まって編集作業を始めようとしたところ、清田さんの写真はすべてiPhone 5で撮影されたことを知ったそう。「一般的な書籍ではデジタル一眼で撮影した写真を使うのが一般的で、1枚あたり20MB~30MB近い容量がある。iPhoneの写真は容量がだいたい3MBぐらいしかなく、これで満足のいく仕上がりになるのか心配になった」(松沢さん)。

 iPhoneの写真で果たして見開きの印刷に耐えられるのかどうか……と、当初は印刷所も戸惑ったそう。だが後日、松沢さんのもとに「Photoshopなどで加工していないオリジナルの写真を用意してもらいたい」と連絡が入ったという。松沢さんは、オリジナル写真を清田さんから取り寄せつつ、写真のなかで明るくしたい部分や階調を出したい部分を指定し、印刷所の担当者に送信した。

 しばらくして印刷所から上がってきた見本誌を手にした松沢さんは、「iPhoneの写真がここまできれいに仕上がるのか!」と驚いたという。なかでも、爆撃を受けてめちゃくちゃに破壊された街の様子を、「観音折り」と呼ばれる加工を用いて1ページの4倍の面積で見せたページが圧巻だったそう。「当初、デザイナーからも『iPhoneの写真で観音は無理でしょう』といわれていたので、これほどきれいに仕上がったのには感激した」と語る。

家や商店が爆撃で破壊され、一面がれきの山が広がるガザの街。清田さんがiPhone 5のパノラマ機能で撮影したものだ
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このパノラマ写真は、観音折りと呼ばれる見開きページに掲載された。これほどの大伸ばしでもぼんやりとした仕上がりにはならず、とてもシャープなのに驚かされる
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 松沢さんが印刷所の担当者に尋ねると、「iPhoneで撮影した写真は印刷時に手を入れる余地がある。昨今は画像処理技術や印刷技術が向上していることもあり、適切に処理することで商業印刷でも問題なく使えるクオリティーで出力できた。iPhoneの写真は、うまくいじることで見せたい部分をしっかり表現できるポテンシャルを秘めているようだ」と評価されたそうだ。