2018年10月20日、六本木アカデミーヒルズで「Scratch 2018 Tokyo」が開催された。基調講演には米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボのラーニング・リサーチ(学習研究)の教授であり、プログラミング環境であると同時にオンラインコミュニティでもあるScratchを開発するチームを率いるミッチェル・レズニック氏が登壇した。レズニック氏は、「AI時代の創造性と学び」と題して、AI時代を生きる子どもたちにScratchはどのような貢献ができるのかについて語った。(大類 賢一=タンクフル)

Scratchが貢献できるのは、プログラミング技術の向上だけではない

 ゲームで遊ぶような感覚でプログラミングを楽しく学ぶことができるScratch。日本国内でも、子どものScratchユーザーを対象とした会合が開かれるなど、広く浸透しつつある。また、2020年からの小学校でのプログラミング教育必修化に向けて、その注目度はさらに高まっている。

 このScratchの開発を率いるレズニック氏は講演の冒頭で、「Scratchはプログラミングの技術を高めるだけのものではない。ユーザーの創造力やデザイン力の向上、コミュニケーション能力の改善にも貢献できる」と語った。

写真1●Scratch開発を率いるレズニック教授が基調講演を行った
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 Scratchの作品は、グローバルに評価されやすい。世界中にユーザーがいると同時に、インターネット上に公開された作品にはどこからでも、だれからでも、試してもらえるからだ。「日本人のScratchユーザーの中には、プログラミング能力とデザイン力を評価され、海外で表彰された人もいる」とレズニック氏は説明した。

 また、Scratchを使えば、子ども1人ひとりの興味に応じて、いろいろな作品をつくりやすい。レズニック氏の書籍『ライフロング・キンダーガーテン』でも詳しく語られているように、Scratchでは、「低い床(簡単に始められる)」「高い天井(習熟度に応じて洗練された作品をつくれる)」に加えて、「広い壁(さまざまな種類の作品づくりをサポートする)」も考慮されているからだ。

 Scratchを用いれば、例えば電車の運転をシミュレーションするものなど、高度な作品をつくることもできるが、プログラミングをするのに必要な操作はほかのプログラミング言語ほど難しくはない。Scratchは主に8歳以上を対象にしているが、5歳から7歳までを主な対象にしているScratchJrという関連ソフトもある。レズニック氏はこのScratchJrを利用してつくられたストーリー付きのアニメーションも紹介し、ScratchやScratchJrを使って多種多様な作品がつくられていることを具体的に示した。

 「編み物が好きな母親のために、Scratchに完成イメージを取り込み、それを編み図に展開する作品をつくった子どももいる。この作品ができた結果、家族のきずながより深まった」(レズニック氏)