テレビのHDMI端子に直接挿して使える超小型パソコン「スティック型PC」が、1年前から人気を集めている。1万円〜4万円程度の価格で、USBメモリーをひとまわり大きくした程度のサイズ。そのなかにCPUやメモリー、ストレージが入っており、電源を入れればそのままWindowsが起動する。ただし、とても低スペックなので割り切った使い方で利用する人が多い。

インテルのスティック型PC「Compute Stick」。10月末にWindows 10搭載版が登場した。価格は2万円弱だ
インテルのスティック型PC「Compute Stick」。10月末にWindows 10搭載版が登場した。価格は2万円弱だ

Windows 10搭載モデルも選べる

 スティックPCが世の中に登場したのは2014年12月。マウスコンピューターの「m-Stick MS-NH1」が最初だ。W38×D100×H9.8mmという小型ボディーに、スマホ向けのCPUや32GBのeMMCストレージなどを内蔵し、OSにはWindows 8.1 with Bingを採用している。税込み1万9800円という買いやすい価格も手伝って、東京・秋葉原を中心に大きな反響を呼んだ。

 その後、2015年6月には半導体の世界的大手であるインテルから「Compute Stick」が登場し、同年8月以降は最新OSであるWindows 10をプリインストールしたモデルも店頭に並ぶようになっている。

2014年12月にマウスコンピューター秋葉原ダイレクトショップで売り出された「m-Stick MS-NH1」
2014年12月にマウスコンピューター秋葉原ダイレクトショップで売り出された「m-Stick MS-NH1」

 今は複数メーカーのモデルが選べるようになっているが、使い方は基本的に同じだ。本体の先端にあるHDMI端子をテレビやパソコンのディスプレーに挿して、もう片方の端にあるmicro USBポートに付属のACアダプターをつないで給電態勢を整える。あとはワイヤレスマウスやキーボードとWi-Fi環境を用意すればいい。ストレージの容量内であれば、WordやExcelなどのWindows用アプリケーションを追加したり、写真を保存したりといったことももちろん可能だ。

 ただし、スペックはWindowsが使える最低限となるので、ゲームをしたり動画編集したりといった重い作業では処理が追いつかないと考えたほうがいい。つまり、見た目も中身もミニマムなパソコンというわけだ。

 それではこんなミニマムなパソコンを、どんな人がどんな用途で使っているのだろうか?

会社内で使うのにかなり便利

 まずは自宅のリビングで使うパターン。大画面テレビに挿して、主にインターネットをブラウジングするときに利用する。「テレビ標準のブラウジング機能は入力や画面の切り替えに時間がかかると感じている人が、そこを強化する意図で導入するというパターンは多いです。リモコンよりもキーボード入力のほうが速いですし、ブラウジングの処理全般もパソコンのほうが得意ですから」(パソコンショップのマウスコンピューター秋葉原ダイレクトショップ)

 仕事用では、会議室のテレビを使って社内プレゼンをする用途で使う人が多いそうだ。「スティック型PCのなかで自分好みのデスクトップ環境を整えておけるので、USBメモリーに入れたプレゼン資料を、まっさらなパソコンで開くよりもサクサクと作業できると好評です。本格的な仕事には向きませんが、プレゼン再生くらいならよほど重い映像を再生したりしない限りは問題なく処理できますからね」(パソコンショップのBUY MORE秋葉原本店)

 最後は、Windows 10を試したいという需要だ。Windows 10は下位バージョンのHomeでも、ソフトそのものを購入するには1万5000円〜2万円弱が必要になる。しかし、スティック型PCには1万5000円を切るモデルもある。「ハードウエアがそろってそのお値段ということで、新OSの操作感を軽く試すために買うという人は珍しくありません」(パソコンショップのドスパラ秋葉原本店)

2015年11月の最安はドスパラの「Diginnos Stick DG-STK1B」。Windows 10入りで、価格は9980円(税込み1万778円)となる
2015年11月の最安はドスパラの「Diginnos Stick DG-STK1B」。Windows 10入りで、価格は9980円(税込み1万778円)となる

 普通のパソコンの代わりとして使うのは厳しいが、特定の用途で割り切って使うなら小型である強みが発揮できる。使い道を具体的にイメージしてから購入するのが、スティック型PCを楽しく利用するコツといえるだろう。

(文/古田雄介)

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