動画撮影やAR機能も向上

 動画撮影は最大4K/60fpsの撮影に対応したほか、音声はステレオ録音も可能。30fps撮影時には明暗部の精細な映像情報を引き出せる拡張ダイナミックレンジ撮影が楽しめるところなどが、iPhone 7と比べたときの大きなステップアップになる。

 またARコンテンツを快適に楽しみたい人も、iPhone XSシリーズかiPhone XRに乗り替えたほうが懸命だ。アップルは今年の夏に開催した開発者カンファレンスで、ARコンテンツの新しいオープンフォーマットとなる「USDZ」を発表した。iOS 12では最新のARフレームワーク「ARKit 2」による「AR Quick Look」に対応したことで、ウェブサイトなどに組み込まれたUSDZ形式のファイルをiOS端末やMacなどで読み込み、カメラに映した現実世界の映像に重ねて楽しむことがより簡単になっている。

 このARKit 2を活用したビジネスの一例が自転車を販売するオンラインショップ「Purecycles.com」だ。同ショップでは、気になる自転車の実寸大のARオブジェクトをダウンロードして、自宅のガレージに仮置きできるサービスを提供している。今後はショッピングサービスやゲームなどでARを活用したコンテンツが続々と増えてくるともいわれている。

iPhone XRで「Purecycles.com」の自転車ショッピングサイトにアクセスして、気になる自転車のページを開く。ページに埋め込まれているUSDZファイルを開く(自転車の画像の右上にあるアイコンをタップする)
[画像のクリックで拡大表示]
すると、実寸大の自転車の3Dオブジェクトが画面に表示され、AR効果によって置き場所のシミュレーションができるという便利なツールだ
[画像のクリックで拡大表示]

 iPhone XRは一見、iPhone XSシリーズの廉価版にも見えるが、実機を試してみるとかなり高性能なスマートフォンだ。これならiPhone XSに迫る価格設定も合点がいく。長い時間使い込めばiPhone XSシリーズと使い勝手の差も見えてくるかもしれないが、短期間のレビューでは性能は肉薄していると言っていい。iPhone XRの出来が想像以上に良かったとも言い換えられる。

 それを踏まえて、新しいiPhoneの中でどれがお薦めかと言われれば、困るというのが正直なところだ。ディスプレーの違いに着目するなら、有機ELを搭載したiPhone XS/XS Maxのほうが深く沈み込む黒色や、瞬く星のきらめきを明るく自然に再現できる表現力の豊かさがある。iTunes Storeにも続々と増えているHDR対応の映像コンテンツをありのままの高画質で味わえるところも大きな魅力だ。一方で、Retina液晶ディスプレーの安定した色合いときめ細かな質感が好みなら、iPhone XRのほうがしっくりくるという人もいるだろう。

 デザイン面でもコンセプトが異なる。ステンレスの光沢感を生かしたゴージャスなボディーはiPhone XS/XS Maxならではのものだし、反対にポップでカジュアルなカラーのスマホを持ちたいなら、iPhone XRがふさわしい。価格が少し安いのもiPhone XRが有利な点だ。結局、今年のiPhoneはラインアップがそれだけ充実しているということ。ユーザーとしてはやはりそのことを歓迎したい。

山本敦(やまもと・あつし)
山本敦(やまもと・あつし) ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。ハイレゾやAI・IoTに関わるスマートオーディオ、4KやVODまで幅広いカテゴリーに精通する。堪能な英語と仏語を活かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす