東京ゲームショウ2018(TGS2018)では、ゲーム動画を中心に配信サービスを行うTwitchもブースを構えていた。この出展のために来日していたTwitchのシニア・ヴァイス・プレジデントのマイケル・アラゴン氏に日本の状況や今後の展開などを聞いた。

 現在、日本のTwitchは視聴者数、視聴時間ともに増えており、動画配信サービスの中で世界のトップ3に入るという。誰でも手軽に配信できることに加え、「パートナー」と呼ばれる配信者になるとアフィリエイトで収入が得られるということもあり、配信者の数が激増している。

 Twitchはもともとゲーム実況などに特化した動画配信サービスだったが、後に音楽などのコンテンツも配信可能になり、複合的なサービスとなっている。しかし、それでも核となるのはゲームで、今後は雑談などのトークを中心としたコンテンツにも力を入れていく予定だ。

シニア・ヴァイス・プレジデントのマイケル・アラゴン氏
シニア・ヴァイス・プレジデントのマイケル・アラゴン氏

 昨年日本にも拠点ができ、専門チームがパートナーへの支援環境を整備している。さらに日本のゲームメーカーがユーザーに対して動画を配信するときにTwitchを利用するように働きかけており、Twitchの認知度向上や一般化を進めている段階だ。「クリエーターファースト」という基本理念にのっとって、パートナーへの収入を増やしていきたいと考えている。パートナーの収入が増え、パートナーが増えることで、より多くの良質なコンテンツをTwitchの視聴者に提供できると考えるからだ。

日本語のハンデをどう乗り越えるのか

 Twitchには、視聴者が配信者に対して、直接お金を支払う投げ銭システム「ビッツ」がある。ビッツは、お金を支払ってから動画を見る先払いや月額料金を支払い見放題となるサブスクリプションなどとは異なり、基本無料の動画への称賛の証や配信者への支援として後払いでお金を払うシステムだ。日本ではあまり見ないシステムだけに、いかに動画に対してビッツを払ってもらえるようにするかが課題になる。そこでTwitchはサイト内に「クリエイターキャンプ」と言うページを用意。配信の基礎から上級者になるまでの方法を分かりやすく説明している。

 また、先述の通り、Twitchでは誰でも簡単に配信できる半面、パートナーになるまでのハードルは高い。配信者からはどうやったらパートナーになれるのかという疑問も出てくる。「これもクリエイターキャンプに記載しています。クリエーターを教育し、収入源を増やし、視聴者を増やすために知りたいことが書かれています」(アラゴン氏)。それでもパートナーになるのは簡単ではない。誰も彼もが簡単になれてしまうと、パートナーになったときの喜びがなくなってしまうためだという。パートナーは目標であり、憧れの対象であることも重要なのだ。

グローバル コンテンツ デベロップメント ゼネラルマネージャーのケンドラ・ジョンソン氏
グローバル コンテンツ デベロップメント ゼネラルマネージャーのケンドラ・ジョンソン氏
日本ADセールス ディレクターのジョン・アンダーソン氏
日本ADセールス ディレクターのジョン・アンダーソン氏

 日本のクリエーターの状況はどうか。Twitchでは、世界に向けて動画を発信できるのがメリットだが、日本人の場合はやはり言葉のハンデが大きい。YouTuberも日本と世界では、稼ぐ金額が1桁以上違うと言われており、その原因が言葉とされている。

 現状では日本のコンテンツが好きな外国人が、気に入った日本の動画をミラー配信し、音声をその国の言葉に翻訳して配信していることがハンデを乗り越える一助となっている。さらに今後は字幕や各国語での音声収録なども考えており、日本人でも海外へ発信できる環境を整えていきたいと語っていた。

(文・写真/岡安学)

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