商業作品だけでなく、今や「ゲームスクールコーナー」においても、VR機器を使用した学生作品の出展は当たり前になった感がある。最新の技術と学生たちの自由な発想によって生み出された個性が際立ったゲームに数多く触れられるのも、東京ゲームショウならではの醍醐味だ。
筆者がゲームスクールコーナーにおいて特に面白い、またはインパクトがあったと思われる4タイトルをご紹介しよう。
日本ゲーム大賞「アマチュア部門」受賞作が出色の出来
内容はいたってシンプルながら特に面白かったのが、日本工学院専門学校ブースに出展されていたPC用アクションパズルゲームの『うつしき』と『PROJECT REMAINS』。両作品とも、今年の日本ゲーム大賞「アマチュア部門」を受賞している。
『うつしき』は、主人公をゴール地点まで到達すればステージクリアとなるゲーム。フィールド全体の四季、すなわち春夏秋冬をボタンで自由に変更することが可能で、各種ギミックも季節によってそれぞれ変化する。これを利用して、写真のように水を凍らせるために冬にしたり、植物を成長させるために夏や秋にするなど、ギミックの仕組みを発見して先ヘ進む方法を探し出すのがとても楽しい。
『PROJECT REMAINS』は、遺跡の中に閉じ込められた主人公とカメラ(の枠)を操作して、主人公を扉(出口)まで到達すればステージクリアとなるゲーム。カメラの枠内に主人公を移動させるとスクリーン上に主人公の像が映し出されるが、像も本物の主人公の動きに合わせてジャンプしたり、物を運ぶことも可能になっているので、これを利用してさまざまなギミックを解き明かしていくのが面白く、クリアしたときの達成感はひとしおだ。
ブース内にいた学生さんのお話によると、どちらも5、6名のチームで4か月ほどで完成させたとのこと。短期間でこれほど面白いゲームを作れたのは、掛け値なしに素晴らしい。就職活動の際はきっと大きなアピールポイントとなることだろう。
奇抜なゲームを発見
毎年奇抜なアイデアを盛り込んだ学生作品を出展する神奈川工科大学ブースには、今年もまた仰天の個性派ゲーム2タイトルが登場した。
「吸引アクションゲーム」というジャンル名を付けた『ゴーストクリーナー』。頭部に住み着いたゴーストをクリーナーで吸い込んで捕まえるというゲームだ。クリーナーを模したデバイスを自身の頭部に当て、画面内に次々と出現するゴーストに照準を合わせて吸引して遊ぶ。画面に表示されたクリーナーのバッテリーが切れるとゲーム終了となり、吸い込んだゴーストの色などによってプレイヤーの性格を診断する、ちょっとした占いの要素も入っている。
もうひとつは、音楽ゲームの『リクルートフィーバー』。ターンテーブルとボタン2個を使用して遊ぶ。学生向けの合同企業説明会の会場が舞台となっているゲームで、新入社員を集めるために社長にダンスを踊らせるという、何とも変わった設定だ。うまく演奏すると入社希望の学生が集まり、さらに人数が多くなると、どういうわけか他社の役員までもが後ろに付いてきて踊り出すのが何だか(いい意味で)おかしい。
同大学で学生の指導をしている情報メディア学科の中村隆之特任准教授は、元ナムコの開発者。「もじぴったん」シリーズの開発者といえばわかる人もいるだろう。中村氏に話を伺ったところ、「ゲームに必要なノリなど基本的なことはしっかりと教えつつ、丸くならないように学生らしさを生かしたものを作らせたかった」とのこと。
「ずっとおバカな企画だなあと思っていましたが、学生のこだわりを尊重した結果、ちゃんと形にはなりましたね。3年生の作品ですので、これから就職活動でも生かせるとは思いますが、いい意味で困っています(笑)」(中村准教授)とのこと。
実際に商業化できるだけのクオリティがあるどうかはさておき、学生自身が思い付いた突飛なアイデアを、先生の手を借りつつもどうにかして形にする校風こそが、毎年のように前代未聞の個性派ゲームが生まれる秘密のようだ。
(文・写真/鴫原盛之)