「P」シリーズや「Mate」シリーズなど、SIMフリースマートフォンの人気製品で日本国内での知名度を一気に上げた中国・ファーウェイ。近年はAndroidタブレットの「MediaPad」、ノートPCの「MateBook」も投入し、カバー領域を広げている。同社躍進の理由はどこにあるのか、競合企業にどう対抗していくのか。ファーウェイのコンシューマー・ビジネスグループのワン・ビャオCOOにPC、タブレットのビジネス戦略について聞いた。

――グローバルの市場において、ファーウェイのPCを購入するのはどんなユーザーだと想定していますか。

ワン・ビャオ氏(以下、ワン氏): スマートフォンが普及するにつれて、消費者はユーザーエクスペリエンスを重視するようになっています。技術はもちろんファッション性も求めるようになりました。その点で、ノートPCはあまり発展しておらず、スマホに比べて遅れている印象が否めません。分厚く、洗練されていないノートPCは、スタイリッシュなものを好む現代人の要求を満たせていないのではないでしょうか。

 ファーウェイでは、ノートPCに革新的な発想を持ち込み、スタイリッシュかつハイスペックなワークスタイルを提案したいと考えています。

 ファーウェイのPCが主に掲げているのは、テクノロジーとファッション性。加えてソフトウエアでの体験です。PCでもスマートフォンと同じような使い勝手を実現し、クラウドを活用してスマホとPCのデータのやり取りをシームレスにしていきます。今後はAIや音声機能などもどんどんPCに取り込んでいきたいですね。

 これまでは、どちらかというとハードウエアに重きを置いて新しい要素を取り入れたり、ファッション性を持たせたりしてきましたが、次の一歩としてはアプリケーションとエクスペリエンスを向上させていきたいと考えているんです。

―― 一方ではスマートフォンで培った技術や機能がPCに取り込まれ、他方ではスマートフォンが大画面化しています。その間に挟まれたAndroidタブレットの市場はあまり大きくありません。ファーウェイはMediaPadシリーズでAndroidタブレットも積極的に展開していますが、Androidタブレットの位置づけについてはどうお考えですか。

ワン氏: 消費者向けのビジネスではすべての利用シーンを網羅したスマートライフソリューションを提供したいと考えています。1つ目は個人が持ち運ぶ利用シーン、2つ目はクルマの中での利用シーン、3つ目は家庭の中での利用シーンです。

 個人が持ち運ぶシーンでは、タブレットは一定のニーズがあると考えます。タブレットは画面が大きく音声や画像、動画視聴のときの体験も良くなりますし、ちょっとしたオフィスワークにも適している。

 私は出張が多いのですが、仕事上、タブレットは欠かせない存在です。例えば、飛行機に乗っているときに読書したり、メールの確認や返信をしたり、スマホで電話会議に参加しながらタブレットで資料を見るといった使い方をしています。法人向けに関しては特に大きな伸びしろがあるのではないでしょうか。ファーウェイはAndroidタブレットの年間出荷台数で見たシェアがグローバルで3位なんです。2018年上期、グローバルでのAndroidタブレット出荷台数は微減傾向ですが、弊社は20%の成長率を実現しています。

――この1~2年、スマホがコモディティー化し、メーカーごとの差も小さくなっているにも関わらず、ファーウェイは短期間でグローバルでの存在感を急速に強めてきました。ビジネスには商品企画、マーケティングなどさまざまな側面がありますが、何が強みだと見ていますか。

ワン氏: ファーウェイがマーケティングを強みとしたことはありません。テクノロジーとイノベーションで他社よりも優れたいと考えています。このため、弊社は新しい製品を出すたびに、全世界で唯一無二な売りを搭載しています。

 この3年間は3つの要素に注力してきました。1つがカメラ技術、2つ目が通信性能、3つ目がバッテリー駆動時間です。これらに投資した結果が表れてきました。2017年に研究開発の投資金額は104億ユーロ(1兆3500億円)。欧州委員会が作った研究開発の投資額ランキングでは、2017年にアップルを抜いて6位になりました。また、2017年に欧州に向けて出願した特許の数は2398件で、これは1位です。

 これまで研究開発には継続的に投資してきましたし、今後も続けていくという信念があります。逆に、他のメーカーと比べるとマーケティングにつぎ込む金額は比較的少ないですね。例えば先日のワールドカップでもパートナー企業などから「ファーウェイはなぜスポンサーシップを結ばないのか」と聞かれたんですよ(笑)。ですが、弊社としては製品の中核的な競争力が何よりも重要だと考えていますから、マーケティングよりもイノベーション、研究開発につぎ込むべきだと考えているのです。

(文/平野亜矢=日経トレンディネット)

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