PC事業を急拡大させたいが故の焦りも

 MateBookで薄型・軽量化に注力し、さらに価格を大幅に抑えることで、インパクトを打ち出したのは、ファーウェイがパソコン市場でいち早く存在感を示したかったからといえる。だがそうした施策からは、ファーウェイの焦りにつながる部分も感じられる。

 実はMateBookがスペインで発表された際、「なぜSIMが挿入できないのか」という疑問の声が相次いでいた。MateBookはファーウェイが本来得意とするモバイル通信要素、つまり3GやLTEによる通信機能を内蔵していかったからだ。

2月にスペインで実施されたMateBookの発表イベントより。この発表当初から、通信機能を内蔵していないことが疑問視されていた
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 MateBookに通信機能を内蔵しなかった理由は、パソコンメーカーとしては新興企業であるファーウェイが、先に挙げた薄さや価格などでインパクトを与えることを優先したがゆえといえる。だがモバイル通信に強いファーウェイに多くの人が期待していたのは、スマートフォンのようにモバイル通信機能を内蔵し、MateBook単体でデータ通信ができることであった。ファーウェイはWi-Fiルーターも提供していることから、ルーターとのセットでMateBookを販売するなどの取り組みも進めるとのことだが、この点は次のモデルで何らかの対処が求められるところだろう。

 そしてもう1つ、国内でいうならば、Officeプリインストールのモデルが用意されなかったことも、ファーウェイの焦りを感じさせるポイントといえる。日本ではOffice 365のサブスクリプションモデルにまだなじみが薄く、Officeのプリインストールが好まれる傾向にある。だが国内で発売されるMateBookは、Officeをプリインストールしたモデルが一切用意されていない。

MateBookの価格はライバルの2in1デバイスに比べて安価だが、価格を重視したため、日本でのニーズが強いOfficeプリインストールモデルが用意されていない
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 この点について、ファーウェイ・ジャパンの関係者は「価格を重視した結果、あえてOfficeプリインストールモデルを用意しなかった」と答えている。パソコン市場で知名度が低いことから、ある程度知識があるユーザーを対象に、低価格でインパクトを与えることを優先したようだが、日本ではOfficeを別途用意しなければいけないことを手間や負担だと感じる人も少なくない。それだけに低価格のモデルはともかく、ハイエンドモデルにはOfficeプリインストールモデルを用意してもよかったのではないかと感じてしまう。

 もっとも、ファーウェイのパソコン事業に向けた取り組みはまだ始まったばかりであり、同社は今後も継続的にパソコンの開発を続けていくことを明らかにしている。それだけにまずは、同社のPCが市場でどのような評価を受けるのか、販売動向を見守りたいところだ。

(文/佐野正弘)