これまで、スマホの端末メーカーが自ら展開する販売・サポート拠点といえば、アップルのApple Storeのほかにほとんどなかった。しかしここ数年で、その状況は変わりつつある。端末メーカーの直営店が増えているのだ。例えば、SIMフリースマートフォンで人気が高いファーウェイは、東京と大阪に持ち込み修理や純正アクセサリーの販売を行う「カスタマーサービスセンター」を開設。SIMフリースマホの定番メーカーエイスーステック・コンピューター(ASUS)は、2018年3月に「ASUS Store Akasaka」をオープンしている。
今回は、メーカーの直営店がユーザーにとってどんなメリットがあるのか、そしてメーカーにはどのような狙いがあるのかを探るべく、ASUS JAPANシステムビジネス事業部ダイレクトセールス課の中村正志氏に話を聞いた。
サポート拠点としての機能がメイン
メーカーの直営店の役割は、大きく分けて2つある。
1つがサポートだ。端末メーカーによるサポートとしては、製品が破損したり故障が疑われたりするときに自宅から修理を依頼できる「ピックアップサービス」を用意しているところが多い。しかしこの方法では、修理品の輸送にどうしても時間がかかるうえ、トラブルの原因の究明やその対策についてスタッフに相談することもできない。
ASUSも「ピックアップサービス」を展開しているが、インターネットでASUS製品に対するクチコミをチェックしてみると、トラブル時のサポートに対する不満が少なくない。ピックアップサービスではスマホが手元を離れてからどのようなチェックがされたのかや、修理の進捗状況が見えないからだ。ユーザーはスマホの修理が終わって返送されるのをただ待つしかなく、ストレスにつながってしまう。
そこで、対面で相談や修理を依頼できるサポート拠点「ASUS Store Akasaka」を開設し、サポートに不安を感じるユーザーの支援を強化しようと考えたという。
カウンターでスマホの症状を伝えると、スタッフがスマホの状態をチェック。修理の見積もりを出す。ユーザーが同意すると、ASUS Store Akasakaのバックヤードで修理するという流れだ。バックヤードの設備はASUSの社内基準に準拠しており、修理のクオリティーはピックアップサービスを利用した場合と同等だ。
修理の受付枠は、スマートフォンの場合で15分に2つ、PCなどの場合で15分に1つ。修理依頼はオンラインでの事前予約が基本だが、予約なしで来店した場合でも受け付けてくれる(予約が入っていれば予約が優先)。いざというとき、飛び込みでも可能な限り迅速に対応してもらえるのはリアル店舗ならではのメリットだ。
もし、修理見積もりが高額になった場合は、ASUS Store Akasakaが指定する端末に限り、特価で購入できるサービスも提供。取材時点では「ZenFone 3」の5.2型モデルが2万円(5月25日時点における同機種の価格.comでの最安値は約2万5000円)と案内されていた。
ASUS Store Akasakaでは、代替機の貸し出し(1回1000円)もしている。部材が確保できる場合は当日中に引き渡す「クイックリペア」の導入も検討するなど、ユーザーの手元にスマホがない時間を最小化するためのサービスを拡充している。
ASUS製品のショーケースとしての役割も
メーカー直営店のもう一つの役割は、製品のショーケースだ。ASUS Store Akasakaの場合、店内にはZenFoneシリーズをはじめ、ASUSのタブレットやパソコンの実機が展示され、手に取って試せる。スマホやパソコンは購入も可能。ASUS製品のアクセサリーもそろっている。
また、製品にちなんだイベントなども展開している。例えば、2018年5月15日に「ZenFone 5」が発表された際には、ZenFone 5を使った撮影テクニックのワークショップなどを開催。ほかにも周辺の商店街と連携して参加者を募集し、スマホの基本的な使い方をレクチャーする「スマホ教室」なども行っている。
サポートのスピード感は魅力だが…
ASUS Store Akasaka は、ASUS製品の情報発信やスマホユーザー全般に向けた活動をしているが、メインの業務は製品サポートだ。故障の診断や見積もりの確認、修理依頼をその場でできるため、ピックアップサービスよりスピーディーなサポートを受けられる。都内近郊のASUSユーザーにとっては、それだけでも足を運ぶ価値があるだろう。
サポートに対するネガティブなイメージの払拭を狙うASUSにとって、対面での迅速な応対が可能になったことはプラスに働いているようだ。中村氏によれば、「店舗の利用者からアンケートを通じて集めた感想は概ね好評」という。
ただ、同店舗をトラブル時の“駆け込み寺”として見たときには、もうひと押しほしいというのが率直な感想だ。取材時にはどの製品も15分に1つだった修理依頼の受付枠は、その後スマートフォンに関しては15分に2つと倍増しているものの、修理を受けるために端末を一時預けなければならないことは変わらない。ピックアップサービスにはないスピードを生かすためにも、クイックリペアの早期導入に期待したい。
(文/松村武宏)
公開時、ASUS Store Akasakaで購入できるのは純正アクセサリーのみとしていましたが、スマホ、パソコン、サードパーティー製アクセサリーも購入できます。お詫びして訂正します。該当箇所は修正済みです。[2018/8/24 13:00]
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