開発者が語る「モチーフは『ドラクエIII』」

 さて、ドラクエVRを体験して改めて感じたのは、「ドラクエ」という“共通言語”の力強さだ。VR ZONE SHINJUKUにあるほかのVRアクティビティーと比べても、ドラクエVRは結構複雑だ。4人1組のチームプレーで、それぞれの能力が違い、役割分担がある。それにすんなり入れるのは、私たちの中に、ドラクエの世界観がすっかり根付いているからだろう。

 「ホイミ」「メラ」「バイキルト」と聞いて、すぐにどんな魔法か分かること。どの敵が強く、どの敵が弱いかを知っていること。さらに、戦闘が始まれば、魔法使いはバイキルトで戦士の能力をアップさせ、戦士は剣で斬りつける。仲間が弱れば、僧侶が回復する――そうしたチームでの連携プレーも当たり前のように身に付いている。戦士は当たり前のように僧侶や魔法使いの盾になってくれるし、僧侶である記者は自分が死にそうになると「ああ、私だけは死んではいけない!みんなを回復できなくなる」と、ものすごく責任感を感じた。

開発を担当した浜野孝正氏(中)、「Project i Can」の小山順一朗氏(右)と田宮幸春氏(左)
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 体験後には、開発陣に話を聞いた。ドラクエVRのプロデューサーの浜野孝正氏によると「モチーフは『ドラクエIII』。職業の役割分担が分かりやすい。各職業のバランスを取るのに工夫した」という。また、VR ZONEを企画・開発しているプロジェクトチーム「Project i Can」の田宮幸春氏は、「今回は(職業によって)できることとできないことをきっちり分けて作った」と話す。ドラクエシリーズの近作では、「魔法戦士」など複数の職能を持った職業が増えているが、ドラクエVRでは戦士は魔法をかけられないし、魔法使いや僧侶は打撃できない。だからこそ、体験中に「『ホイミかけて!』『バイキルトお願い!』などのコミュニケーションが生まれることを狙った」(田宮氏)そうだ。

 ゲーム中に登場するモンスター選びにも理由がある。まずは、体験者の多くが「これぞドラクエ」というイメージを持っていることが条件。そのうえで、近くで斬りつけて戦うタイプのもの、遠くで飛んでいて呪文でないと攻撃できないものなどをバランスよく組み合わせた。「ハード面では、モンスターの斬りごたえにもこだわっている。スライムとゴーレムでは斬りごたえが違う」(浜野氏)。

戦士が使う盾(左)と剣(右)。モンスターごとに異なる斬りごたえを体験できる。戦士でプレーした人の話では「剣が重い!」
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 VR ZONE SHINJUKUでは現在、14のVRアクティビティーが稼働しているが、それらから得た知見もドラクエVRには生かされているそうだ。「特に映像の仕掛けにはノウハウが詰まっている。危ない、怖いという気持ちを盛り上げてからちょっと体を動かすと人間はびっくりする」(田宮氏)。体験者がフロア内の3カ所を順に移動するようにVR内のストーリーや演出を工夫することで、20m×12mの限られたスペースで最大3組が体験できる運用上の工夫も凝らした。

 開発陣が総じて「実現できなかったのは宝箱くらい」とのこと。宝箱を開けてアイテムを取る演出を取り入れたかったが、体験時間などを考慮し、あきらめたそうだ。確かに、宝箱はドラクエっぽい。いつか実現することを期待したい。

(文/平野亜矢=日経トレンディネット)

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