動画配信の登場で制作会社は再び権利を取り戻せるか

――全世界同時配信ということは、作品を作るうえで意識されるのでしょうか?

石川社長: クリエーターは海外を意識して作るとだいたい失敗するんだよね。自分がこれを作りたいというものが根を張っていないとダメ。中澤監督は『キル・ビル』のアニメパートやミュージシャンのPVなども手掛けているけれど、そこがぶれないですよね。

――映画やテレビに加えて、Netflixという作品の出口ができたことは、アニメ制作のビジネスモデルにも何らかの影響を与えるでしょうか。

石川社長: 今回、2つの点で日本の昔のアニメーションに戻った気がするんだよね。

 例えば『タイガーマスク』(1969~71年)とかね、昔のテレビアニメは意外に残酷だったんですよ。今だったら放送コードに引っかかって見せられないようなことがいろいろある。

 でもNetflixは、作り手が作品の表現上、必要と思うところを尊重してくれました。単純にエログロがいいということではなく、技術や才能、美意識があって初めて作れるものではあるんですが。

『B:The Beginning』では作品の雰囲気を重視してか、画面は全体的に薄暗い
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『B:The Beginning』には残酷なシーンもあるが、「ストーリーに必然性があれば問題ないと思う。女性にも楽しんでもらいたい」(石川社長)
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 もう一つ、昔はアニメ制作会社が作品の権利を保有できたんです。オリジナルを作った場合、放送の何年か後にはアニメ制作会社に権利が戻った。だからこそ生き残れて、マーチャンダイズを含めた生き残れるIPを持てたんです。

 今の製作委員会システムでは、出資比率によって利益が分配されますが、制作会社に権利は戻ってこない。でも、『B: The Beginning』のように制作会社がNetflixと組んで単独で作品を作れるなら、かつての大手アニメ会社のように権利を持つことができます。制作会社とクリエーターが継続的に作品を作れる環境が育つのではないかと思っているんです。

――制作会社主導でクリエーターの作家性を生かしたコンテンツを制作、発信できれば、権利を散らさずに済むということですね。それを聞いて、Netflixとしてはどうですか?

沖浦氏: Netflixで言われているのは、挑戦してみたい企画ではバットを思い切り振れということ。Netflixのビジネスはある意味シンプルで、配信だけです。コンテンツのヒットで玩具が売れるとかそういうことは関係なく、メンバーに有料で提供するプレミアムコンテンツが面白いか、人の心に訴えかけるものがあるかというところだけにフォーカスする。それは、アニメでもドキュメンタリーでも実写でも変わりません。

 フォーマットも問いません。何話でもいいし、1話何分でもいい。制約を解いて、面白いものを作ろうという考えです。