α7と同時に発売された有効3640万画素の高画素モデル「α7R」、さらにISO409600という他社にはない超高感度撮影ができる「α7S」や、ピントを合わせながら秒20コマの超高速連写がまったくの無音でできる「α9」など、オンリーワンの性能を持つ派生機種を続々とリリース。他社がフルサイズミラーレスを投入するまでの数年間に、熱心なファンの心をわしづかみにし、この分野でのトップポジションを盤石なものとした。

スマホ時代にヒットした個性派

 平成20年(2008年)にアップルの「iPhone 3G」が上陸したのをきっかけに、スマホのブームが到来。撮影した写真や動画をSNSですぐ使えるといった使い勝手のよさが好まれ、撮影の主役をあっという間に奪っていった。対照的に、デジタルカメラの販売台数は右肩下がりに減っていく。だが、そのような状況でもキラリと光るヒット機種が人気を集めていった。

コンパクトデジカメのサイズでデジタル一眼に迫る高画質撮影できる「Cyber-shot DSCRX100」(ソニー)。今でも高い人気を保つ
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 スマホの画質に不満を持つ人に注目を集めたのが、大型の撮像素子を搭載した高級コンパクトモデルだ。とりわけ記録的なヒットとなったのが、ソニーが平成24年(2012年)に発売した「Cyber-shot DSC-RX100」。一般的なコンパクトデジタルカメラ並みの小型軽量ボディーに1型の大型CMOSセンサーと明るいレンズを搭載し、手のひらサイズのカメラでデジタル一眼に迫る高画質撮影ができると話題を呼んだ。

 RX100シリーズは、レンズやファインダーなどの装備を改良した派生モデルがすでに数機種登場しているが、初代RX100もいまだに現行モデルとして販売を続けている。装備がシンプルなぶんだけ軽く低価格なことに加え、基本デザインが変わらないために古さを感じさせないこともあり、シリーズでも1、2を争う人気を得ている。

 デジタルカメラのブームが過ぎ去ったあとに現れて注目を集めたのが「360度カメラ」とも呼ばれる「全天球カメラ」だ。カメラの前後に2組のカメラを搭載し、1回のシャッターで周囲360度の様子がすべて撮影できる。スマートフォンとVRゴーグルを用いれば、あたかもその場所にいるような感覚で視聴できる点も話題を呼んだ。

周囲360度の様子を撮影する360度カメラとして話題になった「RICOH THETA」(リコー)。前(写真左)と後ろに2組のカメラを搭載している
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 一般向けの全天球カメラは、リコーが平成25年(2013年)に発売した「RICOH THETA」が市場をつくり上げ、基本デザインを変えずに画質を向上した後継モデルを発売している。昨今は、賃貸物件のバーチャル内覧用の撮影にTHETAが使われるなど、BtoB用途に軸足を移しつつある。

 普段スマートフォンのカメラを使っている人でも、運動会や動物園など被写体に近づけない状況では小さくしか撮影できず、不満を感じることが多い。それもあり、超望遠撮影が可能なズームレンズを搭載した高倍率ズームデジタルカメラは現在でも根強い人気を持っている。

125倍ズームを搭載した「COOLPIX P1000」(ニコン)。スマホが苦手な望遠の魅力をアピールした
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自撮りのしやすさで中国で人気になった「EXILIM EX-TR100」(カシオ計算機)
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「インスタ映えする」と若年層に指示された「HERO5 Black」(GoPro)
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 このジャンルの製品は古くから登場していたが、金字塔的な製品となったのが平成30年(2018年)にニコンが発売した一眼スタイルの「COOLPIX P1000」。125倍ものズーム性能を持つズームレンズを搭載し、実に3000mm相当の超望遠撮影を可能とした。月も画面いっぱいにアップで撮れることが話題になり、スマホにはないデジタルカメラの魅力をアピールすることに成功した。

 メーカーが想定していなかった売れ方をした意外な製品もあった。

 カシオ計算機が平成23年(2011年)に発売した「EXILIM EX-TR100」は、デジタルカメラのブームを作り上げた同社の「QV-10」を現代風にアレンジしたカメラで、カメラ部とフレーム部がそれぞれ自在に回転する構造とし、自撮りが簡単にできるようにした。自撮りのニーズが低かった日本より、「きれいに自撮りができる」と人気モデルがSNSで取り上げた中国で人気が爆発し、在庫が払拭。後継モデルは予約が殺到し、発売日前に完売を告知するほどの人気を巻き起こした。

 メーカーも予想しなかったユーザー層からの購買でヒットした製品としては、米GoProが平成28年(2016年)に発売したアクションカム「HERO5 Black」も挙げられる。マリンスポーツやスキー、サイクリングなどのアクティブなアウトドアレジャーが撮影できるタフな小型カメラ、という位置づけで登場したが、日本では広角レンズがもたらす独特な描写が「インスタ映えする」と若年層のユーザーにヒット。「GoProのある生活」というハッシュタグを付けて投稿する現象も現れ、高価ながら「GoProでないとダメ」と指名買いが相次いだ。

 ここ数年、スマートフォンに押されっぱなしで元気のないデジタルカメラではあるが、2月末に開催されたカメラ展示会「CP+2019」では、老舗メーカーのキヤノンがスマホでは不可能な超望遠撮影が楽しめるおしゃれなデザインの小型カメラや、ラフに扱っても壊れないスティック型カメラなど、若年層をターゲットとした新趣向のモデルを多く展示して話題を呼んだ。撮影の機会も増える2020年の東京五輪に向け、どのような意欲的な製品が見られるか、注目していきたい。

(文/日経トレンディネット編集部)