AIのキャラクターがサポートするクラシックコンサート——史上初と思われるイベントが東京・杉並で2019年1月27日に開催された。演奏したのは、ホルンの相原結さん、フルートの上塚恵理さんのお二人。舞台上で二人と一緒にコンサートを進めたのは、富士通クライアントコンピューティングのAIアシスタント「ふくまろ」だ。コンサートの模様と舞台裏を紹介しよう。(中野 淳=PCメディア編集部)

 コンサートの会場は、東京・杉並の「セシオン杉並」。晴天の中、ホールには親子連れなど約400人が訪れた。

 最初に「ふくまろ」が登場したのは、二人の最初の演奏と挨拶の直後。「ふくまろー!」の呼びかけに応じて、舞台のスクリーンに姿を現した。「自己紹介をお願いします」との相原さんの声に、「まろは『ふくまろ』。FMVっていうパソコンの中に住んでいるまろ。今日はみんなに会いたくて来たまろ。一緒に楽しむまろー!」と挨拶。会場では、小さな子供の喜ぶ声が聞こえた。

 「ふくまろ」は、富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の個人向けのパソコンに搭載しているAIアシスタント。ユーザーの音声を認識して、画像や動画の再生、ネット検索、家電の操作などができる。「ふくまろ」の最初の仕事は、作曲家紹介のサポート。「バッハの写真見せて」との呼び掛けに応じて、スクリーンにバッハの肖像画を映し出した。「ふくまろ」がバッハを映し出すと、会場から「おー」という声があがった。

ステージのスクリーンに登場したAIアシスタント「ふくまろ」。コンサートの演奏者は、ホルンの相原結さん(左)とフルートの上塚恵理さん(右)
[画像のクリックで拡大表示]
相原結さん(ホルン)。元陸上自衛隊ホルン奏者。PKO(国連平和維持活動)で南スーダン共和国に赴任し、国連の行事などで多数の演奏を行った。帰国後、東京藝術大学別科に入学。2015年にロサンゼルスの国際ホルンシンポジウム(IHS)で、「IHS Ensemble Competition」に参加し優勝。シンポジウム内で特別演奏を行った。2016年にニューヨークのIHSで、Frank Lloyd氏、Bruno Schneider氏のマスタークラスを受講
[画像のクリックで拡大表示]
上塚恵理さん(フルート)。12歳よりフルートを始める。桐朋学園芸術短期大学卒業後、同大学専攻科修了。ウィーン国立音楽大学マスタークラスを修了し、ディプロマを取得。 第17回全日本ジュニアクラシック音楽コンクールにて審査員賞を受賞するほか、複数のコンクールで入選。現在は東京都練馬区にて「Liebeフルート教室」を主催する。NPO法人「子供のための国際音楽交流協会(AIMEC)」会員
[画像のクリックで拡大表示]

演奏したのはメンバー2人の「ぷらっと交響楽団」

 今回のコンサートは、通常のクラシックコンサートとは違う特徴がある。一つはコンピューターで作成したオーケストラの音に合わせて、演奏するという趣向だ。これによって、演奏の表現力を高めたり、オーケストラの面白さを伝えたりといった効果を目指した。コンピューターで作成したオーケストラの音を楽団員に見立てて、相原さん、上塚さんとオーケストラの音源によるユニット「ぷらっと交響楽団」を結成。今回のコンサートに臨んだ。

 2つ目の特徴は来場者。「親子で楽しむ はじめてのクラシックコンサート♪」という題名で、0歳からの子供が参加できるようにした。実際、会場には小さな子供のいる家族が多く集まっていた。とはいえ、コンサートの構成はクラシックの曲が中心。バッハから始まって、ヘンデル、ハイドン、モーツアルト、ベートーベンなど、有名な作曲家の曲を次々と演奏するという構成だ。童謡やアニメの曲が中心なら、小さな子供も演奏に集中しやすい。クラシック中心の演奏に、どうやって子供たちに興味を持ってもらうかが課題だった。

 そこで、出たアイデアが、3つ目の特徴となるAIのキャラクターとの連携。「ふくまろ」がオーケストラの曲を流したり、作曲家や楽器の写真を映し出したりすることで、小さな子供も自然に演奏に親しめるようになるのではと考えた。関係者によると、こうしたAIとクラシック演奏会との連携は、初めてだという。

 来場した子供には、マラカスをプレゼントした。このため、会場では子供たちの話す声やマラカスを振る音が、あちらこちらから聞こえていた。ところが、スクリーンに「ふくまろ」が登場すると、子供たちは自然にステージに集中。曲の紹介や演奏の際には、会場のざわめきがなくなっていた。キャラクターによるサポートの効果と言えそうだ。