「ふくまろ」はもともと、「○○○の写真見せて」「○○○の曲かけて」と呼びかけると、パソコンに保存した画像や曲を再生する機能を備えている。舞台上のやり取りの大部分は、こうした機能で実現している。コンサートで使った作曲家の肖像画や楽器の写真などは、当日のやり取りに合わせたファイル名でパソコンに保存している。例えば、「金管楽器」というファイル名の画像を保存しておけば、「金管楽器の写真見せて」という呼びかけに対して、「おっけー。金管楽器の写真うつすまろー」と答えて、写真を映し出すといった具合だ。

 ただ、コンサート本番では、子供たちに喜んでもらう「工夫」も必要だ。そこで、「自己紹介をお願いします」「楽しかったよね」など特定の言葉を聞き取ると、事前に用意したセリフを返すようにした。

コンサート版の「ふくまろ」で会話を練習

 当日は、ベートーベンの「喜びの歌」を「ふくまろ」が指揮したり、「おもちゃのチャチャチャ」の曲に合わせて「ふくまろ」がマラカスを振ったりした。このアニメーションを作成したのは、「ふくまろ」のキャラクターを作り出した富士通デザインだ。指揮やマラカスの動きは、演奏のテンポとずれるわけにはいかない。オーケストラの音源に合わせてアニメーションを作成すればずれる心配はないが、スケジュールの関係で、それぞれを同時に進める必要があった。そこで、演奏のテンポだけを事前に決めて、直前にオーケストラの音源とアニメーションを合成することで対応した。

 「ふくまろ」への呼びかけのタイミングが悪いと、正しく言葉を認識しない恐れがある。これには、本番用の「ふくまろ」をセットしたパソコンを事前に用意して演奏者の二人に貸し出すことで対処した。二人は、このパソコンを使って演奏のリハーサルや「ふくまろ」との会話の練習を進めたという。

 こうした取り組みの結果、当日はトラブルなく順調にコンサートが進行した。会場で小さな子供が、楽しそうに、指揮の真似をしたり、マラカスを振ったりする光景が印象的だった。このコンサートがきっかけで、楽器やクラシック音楽に興味を持った子供も多くいそうだ。クラシックの世界は、一見するとIT(情報技術)とは無縁に思われる。今回の取り組みを見て、クラシックとITの連携にはさまざまな可能性がありそうだと感じた。

当日のリハーサルでは、「ふくまろ」に入力する音声のレベルを入念にチェックした
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「ふくまろ」に呼びかけるタイミングを確認する相原さんと上塚さん
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本番中の舞台裏。FCCLのスタッフがスクリーンの画面の切り替えなども担当した
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コンサートが終了して、関係者一同で記念撮影
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