スマートフォン販売で世界第4位のシェアを誇る中国のOPPOが、2018年1月31日に日本市場進出を発表した。多くの日本人にとってなじみのないメーカーだが、OPPOは世界4位という大きなシェアを獲得している。そこで改めて、OPPOとはどのような企業で、どのような戦略をもって日本市場に乗り出すのかを、携帯電話・モバイル専門ライターの佐野正弘氏が説明する。

 ファーウェイがSIMフリースマートフォン市場でトップシェアを獲得したり、ZTEがNTTドコモの2画面スマートフォン「M」を製造したりするなど、最近日本でも中国のスマートフォンメーカーが急速に存在感を高めている。そうした中、新たに日本市場進出を発表した中国企業が「OPPO」(オッポ)である。

 OPPOは世界のスマートフォン市場で、サムスン電子、アップル、ファーウェイに次ぐ4位の販売シェアを獲得する大手企業だ。そのOPPOが、フラッグシップモデルの「R11s」を手に、日本市場への参入を大々的に発表したことは、携帯電話業界にとって大きな話題だ(関連記事:日本初上陸!世界4位、中国OPPOのスマホ最速レビュー)。

「R11s」で日本進出を果たした中国メーカーのOPPO。日本での知名度は低いものの、アジアの新興国を中心にシェアを拡大し、世界4位の販売シェアを持つ企業だ
「R11s」で日本進出を果たした中国メーカーのOPPO。日本での知名度は低いものの、アジアの新興国を中心にシェアを拡大し、世界4位の販売シェアを持つ企業だ

元々はAV機器メーカーだったOPPO

 とはいえ、日本ではOPPOの知名度は決して高いとはいえない。知らないという人も多いだろう。

 OPPOは2004年に設立された非常に新しい企業であり、元々はDVDプレーヤーやMP3プレーヤーなどを手がけていた。だが2008年に携帯電話事業に参入して以降、携帯電話メーカーとして急速に成長。現在は中国のほか、アジアの新興国を中心に30の国や地域の市場に進出し、事業規模を拡大しているようだ。

 そうした経緯もあり、現在OPPOのブランドには、携帯電話事業を手がける「OPPO」と、AV機器を手がける「OPPO Digital」の2つがある。このうちOPPO Digitalは、既に日本に進出しており、オーディオ市場で一定のポジションを築いてきた。OPPOの日本法人であるOPPO Japanには、OPPO Digital Japan社長の河野謙三氏も取締役として参加している。

AV機器を手掛けるOPPO Digitalは先に日本進出を果たしており、OPPO日本法人の取締役としてOPPO Digital Japan社長の河野謙三氏が加わっている
AV機器を手掛けるOPPO Digitalは先に日本進出を果たしており、OPPO日本法人の取締役としてOPPO Digital Japan社長の河野謙三氏が加わっている

カメラと急速充電に独自の技術を採用

 OPPOはスマートフォンを使いこなす若い世代のニーズを重視したスマートフォン開発をしており、それが同社のスマートフォンの特徴的な要素につながっている。

 中でもOPPOが注力しているのがカメラ機能。OPPOはこれまでにも、5000万画素のカメラを搭載した「Find 7」やカメラが自動で回転する「N3」など、カメラに特徴がある個性的なスマートフォンを数多く投入している。今回日本に投入されたR11sも、1600万画素と2000万画素のデュアルカメラ機構を採用し、昼間は1600万画素のカメラ、夜間や暗い場所では2000万画素のカメラを用いて撮影するという、非常にユニークな使い方を提案している。

R11sは2000万画素と1600万画素のデュアルカメラを搭載しているが、昼と夜とで撮影するカメラを使い分けるというユニークな活用をしている
R11sは2000万画素と1600万画素のデュアルカメラを搭載しているが、昼と夜とで撮影するカメラを使い分けるというユニークな活用をしている

 もう1つ、OPPOのカメラ機能で特筆すべきポイントが、セルフィー(自分撮り)に力を入れていることだ。例えば、自分撮り写真の肌をきれいに見せる「美肌機能」は現在多くのスマートフォンに搭載されているが、OPPOが2012年に導入したのが先駆けだ。自分撮り専用の研究機関「ポートレートラボ」を構え、ファッションや写真の専門家から意見を募るなどして、現在も美肌機能に一層の磨きをかけているという。

 日本市場参入の第1弾となるR11sも、フロントカメラに2000万画素のカメラを搭載し、ハード面で精細な自分撮りができるようにした。加えて、AI技術を活用した「AIビューティーセンサー」機能を搭載。254のポイントから顔の特徴を取得、膨大な量の自分撮り写真データを活用して、年齢や性別、肌の色などさまざまな条件に応じた美肌効果を適用できるという。

R11sはAI技術を活用し、254のポイントから得た顔の特徴と、年齢や性別、肌の色などから適切な美肌効果を適用する仕組み
R11sはAI技術を活用し、254のポイントから得た顔の特徴と、年齢や性別、肌の色などから適切な美肌効果を適用する仕組み

 カメラと並んで、OPPOが重視しているのが急速充電だ。OPPOには安全性を保ちながら素早く充電できる独自の急速充電技術「VOOC」があり、これが同社を躍進させる要素の1つにもなった。VOOCによって、5分間の充電で2時間の通話ができることを打ち出した「R9」は、2016年に中国などで大ヒット。R11sにも搭載しており、R9と同様に5分間の充電で2時間通話ができることをうたっている。

独自の急速充電技術「VOOC」も、OPPOの人気を高めた大きな要素の1つとなっている
独自の急速充電技術「VOOC」も、OPPOの人気を高めた大きな要素の1つとなっている

日本市場で海外と同じ戦略が通じるか

 OPPOは戦略面でもいくつかの特徴を持っている。

 1つは積極的なプロモーションだ。OPPOが高いシェアを占めている国に行くと、街中の至る所にOPPOの広告が打ち出されており、中国などでは専門店もある。こうした積極的なプロモーションで、OPPOは各市場でのブランドと知名度を急速に高め、人気を博すに至っているのだ。

 もう1つ、最新のトレンドをいち早く取り入れる貪欲さも、OPPOが人気を獲得した要素の1つだろう。R11sでは、最近のスマートフォンのトレンドでもある、18:9の縦長比率、6.01インチ有機ELディスプレーを搭載。フロントカメラで顔を認証し、素早くロックを解除したり、画面中央下部から上にスワイプしてホーム画面に戻る操作ができたりと、アップルのiPhone Xを強く意識した機能やインターフェースを多数採用した。

 OPPOはサムスンやアップルなどと比べると総合力でまだ劣る部分があるが、若い世代をターゲットとして自分撮りや急速充電などに機能のポイントを絞り、積極的なプロモーションでブランドイメージを高めるという、一点突破型の戦略で急成長を遂げている。だがその戦略が日本でそのまま通用するかというと、難しい面があるだろう。

 最大の障壁はやはりiPhoneだ。そもそも日本は少子高齢化が進んでおり、若い世代のボリュームが小さい。加えて日本の若い世代に対するiPhoneのブランド力は絶大で、他のAndroidスマートフォンにあまり目を向けない傾向が長く続いている。また日本はキャリア向けのマーケットが大きな割合を占めており、他の国では高級品とされるiPhoneが非常に安い値段で手に入ってしまうのも、OPPOのような新規参入メーカーにとっては不利だといえる。

 そうしたことからファーウェイなどは、最初からiPhoneと直接ぶつかり合うのではなく、SIMフリー市場で高品質な低価格モデルを販売することにより、人気と知名度を高めてきた。だが、OPPOはSIMフリー市場にフラッグシップモデルのR11sを投入するのみで、ボリュームを獲得するのに欠かせない低価格モデルを用意しておらず、現状のままでは販売面で不安を感じる。

 これまでインドネシアやシンガポール市場への進出を手がけてきたというOPPO Japanの鄧宇辰社長は、「個々のマーケットの文化や価値を尊重するとともに、固有の文化を理解して市場に対応したことで、短期間のうちにトップブランドになることができた」と話す。それだけにOPPOが日本で大きな成果を出すには、いかに日本の市場を学び、適した対応をとることができるかが強く求められるだろう。

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著 者

佐野 正弘(さの まさひろ)

 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

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