電子チケットはファンサービスにも有効

 転売防止やチケット運用業務の効率化などを目的に採用したQuick Ticketだが、もう一つ大きな役割がある。来場者へのファンサービスだ。

 西武ライオンズではこの10年、リピート客やファンクラブ会員の獲得に力を注いでいる。きっかけは観客数の危機的な落ち込みだ。2007年には年間の観客動員数が109万人まで下落。これは、12球団最下位の数字だ。観客動員数の落ち込みは球団の財源減少、さらには選手獲得が難しくなるなどチーム力の低下にもつながりかねない。

 課題はどうやって球場に足を運んでもらうか。吉田マネージャーはこう説明する。「(埼玉県所沢市にある)メットライフドームの周囲には室内練習場や寮、ファームの本拠地などもあり、選手にとっての環境はいい。一方で、一般向けの商業施設やオフィス街などがないため、観客が仕事帰りにちょっと立ち寄るといったことは難しい。リピート客やコアなファンの確保が重要と考えた」。

 このため、CRM(顧客情報管理)システムを導入。ファンクラブ会員向けにチケットやグッズの購入額などに応じてたまるポイント制度「Lポイント」や、年間のチケット購入額に応じてLポイント還元率が上がる「ステージ」などのサービスを展開している。こうした取り組みのかいもあって、年に1回以上来場するファンクラブ会員数は2008年の4万5400人から2018年には7万7700人に増加。増えた会員がけん引役となり、2018年の球場観客動員数は176万人で2008年から161%、チケット販売額(年間席を除く)は265%まで伸長した。

 こうしたファンクラブ向けのサービスとは異なるものの、Quick Ticketでもリピート客を獲得するためのさまざまな仕掛けをしている。

 その一つがLINEを通じた情報発信だ。西武ライオンズの電子チケットでは、購入時に利用者にLINE IDを登録してもらう。そのLINE ID宛てに、試合前日にはリマインドメッセージを、当日の試合開始前には試合の見どころを、入場後にはウエルカムメッセージや来場者向けのプレゼントキャンペーン情報を配信。勝った試合の後は、来場者限定で「ビクトリーフォト」と呼ばれる画像のダウンロードURLも送信する。試合の前後を含めて「球場に行くのは楽しい」という経験を、来場者に味わってもらうのが狙いだ。

 来場した試合の電子チケットや入手したビクトリーフォトなどは、Quick Ticketと連携するplaygroundのプラットフォームサービス「MOARA」上で一覧できるので、コレクションニーズも満たされそうだ。

勝った試合の後に送られてくる「ビクトリーフォト」。来場者限定でダウンロードできる
playgroundのプラットフォームサービス「MOARA」に購入したチケットや取得した画像などを集約、閲覧できる。興行主としては、券面のデザインなどにもこだわりがいがありそう