宮津大輔さん
広告代理店 → ベンチャー企業の広報担当 → 買収されてIT企業の人事部 → 美術大学の教授に転身! 40代の「もがき」を通して、新しい仕事を探した宮津大輔さんが「45歳から新しいキャリアの開くコツ」を伝授します
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人からどう見られているかを知る

 あなたは、自分のことをどれだけ知っているでしょうか? 知っているようで、知らないのが自分自身のことだと思いませんか? そんなわけで、最初のワークは「自分自身を知る」です。

 このワークは、過去新入社員研修や大学のキャリア・デザイン系授業は勿論のこと、人事部時代には管理職研修にも取り入れ実施してきました。もしかしたら、どこかのセミナーで似たようなワークを経験された方もいらっしゃるかもしれません。私も過去にこれと似たものに出会い、同じようなことを考える人事マンがいるものだと思った記憶があります。

 「人生二刀流」の「二刀流」とは、勤務先における現在の仕事いわゆる本業を大太刀、将来の副業を視野に入れた種まきを小太刀に見立てたものです。会社では定量的な「MBO(目標管理制度)」に加え、最近では「360度評価」など上司はもとより、部下や同僚にまで評価されるようになってきています。ところが、副業に臨むあなたの人物像や強み・弱みについては誰も評価してはくれません。

そこでまず始めにやってほしいのは「漢字一文字で自分を表す」です。ご自身を漢字一文字で表すとしたら、何という字が適切でしょうか? そして、なぜその字を選んだのか、簡単でも良いのでその理由も書いてください。ポイントは、例えば「みる」であれば、「見る」も「観る」も「視る」や「診る」「看る」もある点です。また、「きく」なら「聞く」「聴く」「訊く」といったように様々な字があり、少しずつ意味やニュアンスが違っています。どの字があなたに相応しいのか、スマホの辞書機能や検索エンジンを使ってもよいので、こだわって一文字を探してみてください。

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 ワーク自体は、非常にシンプルなので10分程度で終了しますが、大事なのはその後です。遠慮なくあなたに意見を言ってくれる身近な人、たとえば奥様でもご主人でも、あるいは親友でもお子さんでも結構です。利害関係があまりない同期や、他の業界に勤める大学時代の友人といったあなたの”ON”の部分を知る人であれば、なおよいでしょう。そうした方々 に、あなたが書いた一文字を見せて、ぜひ忌憚(きたん)のない意見を聞いてみてください。

 今までの経験からすると、ご自身が選んだ字とその理由が、身近な方からのコメントと一致しないケースのほうが多いはずです。

 私自身は「観」という字を選びました。アート・コレクターなので見て楽しむ観賞の「観」であり(美術の場合には、「鑑」賞のほうが一般的ではありますが)、仕事においても対人関係であっても、まず対象をよく観察して判断したいというのがその理由です。後で知ったのですが、仏教では、ものごとの表面的な有様を突き抜けて、その本質を見透かす智慧のはたらきを「観」というのだそうです。

 家内からは「観」ではなく「買」ではないかと半ば冗談で指摘を受け、前職の同僚からは「観」るというより、チャンスが来るまで辛抱強く「待」つではないかというコメントをもらいました。大切なことは、自分だけの思い込みではなく、周囲からの客観的な人物評を得ることにあるのです。なぜなら、ヴォランティアや副業に臨む場合には、会社という組織の一員ではなく、他でもないあなた自身があなたの代表となります。あなたが世の中からどのように見られているか、企業のブランド・イメージの重要性を考えれば自ずと明らかだと思います。

(写真/稲垣純也)

宮津大輔さん
横浜美術大学教授 京都造形芸術大学客員教授
宮津大輔さん 1963年生まれ。広告代理店、IT企業の広報、人事管理職を経て現職。94年から現代アートのコレクションを始め、400点以上の作品を持つ。著書に『現代アートを買おう!』(集英社新書)、『アート×テクノロジーの時代』(光文社新書)などがある。