去る10月、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を原案とする短編映画『IN-EI RAISAN(陰翳礼讃)』の京都での初上映が発表され、注目を集めた。『陰翳礼讃』は、いまや日本にとどまらず世界中で愛読され、数々のクリエイターたちのバイブルとなっている名著である。その映像化に世間が期待を寄せるのも当然だろう。しかもこの映画、日本初の「トランスメディア方式」を採用しているという。映画を包括する「STORYGENIC KYOTO」と題されたプロジェクトを取材した。

谷崎潤一郎原案の短編映画で初主演を飾ったモデルの国木田彩良。(衣装提供:細尾 映画『IN-EI RAISAN(陰翳礼讃)』より)

日本初のトランスメディア方式で描く谷崎の『陰翳礼讃』

 従来のクロスメディア方式の映画は、先ずは単行本が書店で販売され、同一のストーリーが映画化され、のちにビデオグラム化されるというものであるが、トランスメディア方式は、映画の前にもストーリーがあり、映画の後にも様々なメディアやデバイスを横断してストーリーが形成されるため、より複雑なユーザーエクスペリエンスの設計が必要になる。たとえばトランスメディアでは、映画館で見た映画の物語の続きが、旅先のホテルのロビーで展開され、鑑賞者のスマートフォンに映画の登場人物から電話が届く、そんなリアルとヴァーチャルが交錯するような状況すらも生み出す。世界的にもまだ実例は少ない。

 さてでは、この「STORYGENIC KYOTO」では、どのようなトランスメディアが試みられているのだろうか。同プロジェクトの端緒となるのが、先に述べた谷崎原案の映画『IN-EI RAISAN』(監督:高木マレイ)だ。主演は、国木田独歩の玄孫でモデルの国木田彩良。着物姿の彼女の横顔をとらえた映画のイメージビジュアルは、リリース配信後オンライン上で瞬く間に拡散され、谷崎が唱えた「陰翳礼讃」という思想への厚い支持を改めて実感した。

 10月5日~7日の3日間、この映画の初上映会および展覧会が、映画の撮影地でもある京都・建仁寺の塔頭、両足院にて行われた。

両足院の入口。上映会初日は平日にもかかわらず、多くの来場者があった。 (撮影:田村雄介 写真提供:(株)トランスメディア・クリエイターズ)