米のヒット甲子園2017の大賞米に選ばれた「石見(いわみ)高原ハーブ米 きぬむすめ」(以下「きぬむすめ」)。その生産現場を取材した。
米ひと粒ごとの食感はしっかりしながらも、さっぱりした味わいで、毎日食べても飽きのこない「きぬむすめ」。JAしまね島根おおち地区本部管内では2009年から栽培をスタートした。
オオサンショウウオが自然の中で成育するほど水質のよい地域で、古くから石見和牛の堆肥を活用するなど、土づくりを推進してきた。地域の自然と環境を活かしたさらなる特色ある米づくりを目指し、ハーブの活用に着手した。
ハーブの活用で化学肥料の使用を99%抑える
「きぬむすめ」は、稲刈り後にハーブの一種、クリムソンクローバーやレッドクローバーを播種(はしゅ)し、開花直前に土中にすき込み、緑肥にする方法で栽培。大気中の窒素をクローバーの根に取り込む根粒菌の力を活かすことで、化学肥料の使用を99%抑えられる。
JA指導の下、使用可能な除草剤や散布回数なども細かく規定。徹底した栽培管理とその実践が功を奏して売れ行きも好調だ。7〜8月には予約で販売終了するという。
「ハーブの利用に加え、夜は冷たい水を田に入れ、昼夜寒暖差を10度以上保ち、稲をしっかり休ませるなど、 多方面から品質向上に取り組んでいる」(JAしまね元根正規氏)。
2017年の生産量は約80トン。「高齢化や、手間ひまかかる栽培方法ゆえ、単純な増産は難しいが、挑戦し続けなければ、農家は生き残れない」と生産者部会会長・三浦秀樹氏。今後も誠実で地道な努力が続く。
(文/木原美芽、写真/橋本真宏)