現地の家庭に滞在しながら暮らす旅をしている私が、この秋に訪れたスペイン。スペイン料理は日本でも人気があるが、食を無視してスペインを語ることはできないと言えるほど食への意識が高い国民性だ。スペインでメインとなる食事は昼食で、だいたい午後2時半から3時の間に始まり、2時間ほどゆっくり食事を楽しむ。その食事の相棒としてよく飲まれているお酒といえば、定番のワインやビールに加え、カバやシェリー酒なども有名だ。

歴史は繰り返す!?

 そんなスペインで、若者たちを中心に再び人気に火がついているお酒がある。それが、フレーバードワインとも呼ばれる「ベルモット」だ。スペイン語ではベルムットと発音される。ベルモットという言葉はフランス語のvermout/vermouthから来ている。ワインに多いものでは40種類以上のハーブを漬け込み、加糖したフレーバードワインである。その起源は、紀元前460年頃といわれており、古代ギリシャの医者ヒポクラテスが開発したお酒ともいわれている。古く、歴史ある飲み物だ。

ベルモット専門店「LA HORA DEL VERMUT」で一番人気のイザギレ(1杯2.5ユーロ)
[画像のクリックで拡大表示]

 元来スペインでベルモットを飲む習慣があったのは、スペイン第3の都市で地中海西部に面しているバレンシアであった。1960年代から80年代にかけてブームとなり、その後廃れていった。ブームが衰退してしまった原因は、バレンシアの若者たちが夜遊びをするようになったからともいわれている。夜遅くまで、もしくは翌日の朝までバーやクラブで過ごす夜型の生活が原因で、休日の大切な家族との昼食時に二日酔いだったり参加しなかったりしたことが、食前にベルモットで一杯という習慣を奪ったともいわれている。

 ベルモットは若者たちにとって、年寄りが飲むお酒というイメージしかなかったそうだが、4、5年前から、若者たちの間で人気となった。今ではその人気が定着して、食文化の一つのカテゴリーとして習慣にまでなりつつあるのだ。スペインの首都マドリードでは、扱っていないバルを見つけるほうが難しいほどだ。最近ではベルモットを専門に扱うバルまでできている。なぜ今になって若者に人気になったのか、その理由を探ってみた。

 マドリード市内に2店舗を構える、ベルモット専門店「LA HORA DEL VERMUT」(ラ・ホラ・デ・ベルムット)を訪ねた。お店がオープンして約1年。おしゃれな内装の店内には、棚にぎっしりとベルモットが並んでいる。日曜の13時の店内はすでに昼食前の一杯を楽しためのお客さんで溢れ、扉が開放された入口からはどんどんと新しいお客さんがやってくる。