製造業が盛んな群馬県、愛知県、静岡県には従来、多くのブラジル人や南米出身者たちが暮らしていることは広く知られている。埼玉県南部には、蕨市とクルディスタンをかけて「ワラビスタン」と呼ばれるほど多くのクルド人が生活している地域があるなど、各地で外国人集住地が増えている。世界中にこういった外国人や人種ごとの集住コミュニティーが存在しているが、こうした集住地ができるのは移住先でのカルチャーショックを和らげる効果や、適応の一助になるからだ。そして近年、新たな集住地として多くの日系ブラジル人たちが移住しているのが、島根県の出雲市だ。

 ブラジルは世界でも日系人が多く暮らす国の一つであり、2018年の今年は日本人移住110周年に当たる。7月18日から28日まで、秋篠宮眞子内親王殿下がブラジルを訪問し、5州14都市を訪れて記念・歓迎行事に出席されたことで話題になった。

島根・出雲市で増加する日系ブラジル人

 私の出身地は、島根県の隣の鳥取県。最近でこそ、観光で訪れる外国人を見かける機会が増えたものの、まだまだ出会う確率は低い。今回の取材で訪れた出雲市の駅に降りた途端、ポルトガル語で話すブラジル人らしき人たちの声がちらほら聞こえてきた。

 現在、出雲市に住むブラジル人は3230人(2018年7月出雲市役所)。彼らのほとんどは日系ブラジル人で、日本人に先祖を持っている。ブラジル人が島根県に移住を始めたのは約25年前だが、リーマンショックで一時減少。5、6年前から再び出稼ぎに来る人たちが増えている。

 彼らはどうして、領事館がある都市の一つである名古屋市からも遠く、交通の便も良いとは言えない地域へやってくるのか。その理由は、出雲村田製作所が携帯電話で使われるセラミックコンデンサーの需要に対応するため、ブラジル人の雇用を急速に増やしたという背景がある。

 急増するブラジル人に応じて、出雲では新しい取り組みや、需要が出てきている。出雲市は、ゴミの出し方や分別方法を助けるためのアプリである「さんあ~る(出雲市版)」を、日本語、ポルトガル語、英語で配信したり、ハローワークにポルトガル語で対応できる人を配属したりしている。出稼ぎに来ているブラジル人の子どもたちは、公立の小学校などに通っており、日本語理解がスムーズにいかない問題も生まれている。ポルトガル語を解す教師を増強する考えもあるのだそうだ。

出雲市が提供している「ゴミ出しアプリ」
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