当記事はnikkei BPnetに連載していたものを再編集して掲載しました。初出は2008年10月30日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。

 「最近の若者は本を読まない。彼らの日本語能力の貧困さは目を覆うばかりだ。このままでは日本人の精神文化そのものが失われてしまう」

 管理職世代のオジサンたちが説教くさく嘆く声を耳にしたことはないだろうか? 「また始まったか」。うんざりしながらも、反論できずにこの言説を受け入れている若きビジネスパーソンも少なくないかもしれない。

 しかし私は、『口のきき方』での取材以来、この言説が「都市伝説」並みの信ぴょう性に欠ける「とんでも話」であることをしばしば指摘してきた。

(写真:hinooto / PIXTA)
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おじさんのほうが「読んでいない」

 文芸評論家の斎藤美奈子さんはある雑誌で「若者の活字離れというけどそんな統計は見当たらない。むしろ日本人は年齢が上がるほど読書をしなくなる。若い世代の読書量は近年むしろ増えている。憂慮すべきは中高年だ」と、毎日新聞の世論調査を引用して「俗説」をきっちり否定している。

 実は、文化庁が発表したここ2年間の世論調査を子細に見れば、「俗説」がいかに偏見に満ちているかを示す数字が並んでいる。「新聞」「雑誌」「ウェブニュース」について活字との接触度の調査を見てみよう。

 平成18年度「国語に関する世論調査」によると、まず新聞については、20代の若者は「読む派」が53.7%と半分強。30代から74.0%と「読む派」がグンと増え、40代85.9%、50代87.6%、60代は83.7%と大半が「読む派」だ。オジサンの圧勝である。

 しかしウェブニュースとなると、若者世代の半分は読んでいるのに、逆に50、60代は読まないが7~8割。携帯電話に特化したデータはないが、もし「携帯電話でニュースに接触しているか」の項目があったら、若者世代が圧倒的にオジサン世代を凌駕(りょうが)していることは想像に難くない。

 雑誌では、20代の若者の65.2%が「読む」と答えているのに対し、40代は「読む派」が5割を下回り、まだまだ働き盛りと自負する50代がなんと41.6%。要するに「若者が活字を読まない」と断定することは間違いである。