当記事はnikkei BPnetに連載していたものを再編集して掲載しました。初出は2013年7月18日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。

「奥が深いですねえ」=「よく分かんないなあ」

上司:「いいか、そもそも営業ってのはなあ、クライアントがノーと言った瞬間からがスタートなんだ。ノーという言葉の裏にある本当のミッションを探る。そこでPDCAだ! CLオリエンテッド・ソリューションにおける営業マインドとは、すなわちCSだ!」

若い部下:「営業って、奥が深いですねえ」

 若者たちがこんな場面で口にする「奥が深いですねえ」に最近ひっかかっていた。「奥が深い」は本来、物事を高く評価する言葉だ。辞書には「しろうとには分からない・おもしろさ(味わい)があるようす。例:陶芸の世界は奥が深い」(三省堂国語辞典)とある。

 「営業って、奥が深いですね」を文字通り真に受ければ、営業を熱く語る上司を心からリスペクトし、仕事への前向きな興味関心と理解を示す感心な部下と、思えなくもない。ところが私の経験では、若い連中は違った意味で「奥が深いですね」を口にしている。

 「奥が深いですねえ」という言葉。実は「奥が深いですねえ」=「よく分かんないなあ」なのではないか。すなわち、部下が上司に「その話題、パスで御願いします」という「やわらかい拒絶を表す若者言葉」の⼀種である。

 そんな話もしてみたいなあ、と考えながら、待ち合わせの場所に向かった。

「奥が深いですねえ……」(写真:msv / PIXTA)
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