源氏物語にみる<かおり>と<におい>の大バトル

 ま、だいたいこんな順当な所に話しは落ち着いた、と思われた。ところが最後に意外な展開が待っていた。

飯間:「においVS.かおり。現在、女性グルメリポーターの間では、かおり優勢、におい劣勢であるというお話でしたね。とはいえ、においは雅な歌の世界でしばしば効果的に使われてきました。<~朝日に匂う山桜花>という具合に。におい、といっても<照り映える>という視覚に訴えた表現も伝統的にあるんですね。<においたつ霊峰富士>。上品な言葉です。そうそう、それにいにしえの京の都では、<においがかおりを打ち負かした!>という話もあるんです。実は……」

 ここで、飯間さんがマニアックな本領を発揮します。

飯間:「ご存じ源氏物語に登場する、浮舟の物語を思い出して下さい。彼女を巡って、匂宮(においのみや)と薫(かおる→かおり、と強引に読み替え)が恋の鞘(さや)当て。悪辣な手を使い肉体関係を結び、その結果、浮舟の心までをも奪ったのは、かおり(薫)ではなくにおい(匂宮)。すなわち、勝ったのはにおいだった、とのこの事実。どう受け止めますか?」

道浦:「なーるほど! 例の源氏物語最後のヒロイン、浮舟を見初め、ともに暮らした薫から彼女を強奪した匂宮の物語。<かおり>と<におい>の大バトルねえ。ありました、ありました! いつの頃からか優劣が大逆転! こりゃあ面白い!! ねえ梶原さん」

梶原:「うーん、奥の深い話ですねえ~」(三者爆笑)

 思わず口にしてしまったこの言葉。知的な話についていけない「弱者」にとって、逃げをうつには便利な言葉だと改めて感心させられた。

 困ったときは、ぜひ皆様も……。

梶原 しげる(かじわら・しげる)
梶原 しげる(かじわら・しげる) フリーアナウンサー。1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーになる。92年からフリーになり、司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員を担当。著書に『すべらない敬語』『そんな言い方ないだろう』『敬語力の基本』『最初の30秒で相手の心をつかむ雑談術』『毒舌の会話術』『プロのしゃべりのテクニック(DVD付き)』『即答するバカ』『あぁ、残念な話し方』『会話のきっかけ』『ひっかかる日本語』『新米上司の言葉かけ』ほか多数。近著に『まずは「ドジな話」をしなさい』(サンマーク出版)、『不適切な日本語』 (新潮新書)がある。