当記事はnikkei BPnetに連載していたものを再編集して掲載しました。初出は2014年7月10日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。

『かもめのジョナサン』の完成版を手にとってみた

 1970年代に入って早々にアメリカで発売され、全世界で4000万部を超える大ベストセラーになった『かもめのジョナサン』(リチャード・バック著)。日本では1974年に出版され、この年最大の売り上げを記録したその本が「40年ぶりの封印を解かれた奇跡の最終章が加わり……」という調子の「ミステリアスな惹句(うたい文句)」とともに全国の書店に平積みされている。

 そこで今回は、「何十年も前に読んだ本に再会したとき、人はどうなっちゃうのか?」を考える。

 40年前。ラジオ局のアナウンサーになったばかりの私は「流行ものには目を通しておくように」という先輩のアドバイス(押しつけ)に従って、「時代の必須アイテム」を書店で一冊購入した。

 手に取った私の感想は「薄い! 鳥の写真が多い。でもその分、文字も少ないから簡単に読めそうでラッキー!」だった。「目を通しておくように」とは「速やかに読了しその内容をかいつまんで報告せよ」との命令だ。「おしゃべり職人」は、こんなふうにして先輩に鍛えてもらうのが常だった。

 「楽チンに読み切れる!」と高をくくっていたら、これがなかなかの難物だった。失敗と挫折を繰り返すかわいいかもめを描いた第1章中盤あたりまでは、あっという間に読み飛ばせたが、飛行訓練の修業を積むうち、次第にジョナサンが「異次元のエラいかもめ」に変身する辺りから私はついていけなくなった。このかもめ、頑張るにもほどがある。私同様「ファッションとして買ってみた」という人たちも戸惑ったのではないか。

(写真:あいす☆くりぃむ / PIXTA)
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