当記事はnikkei BPnetに連載していたものを再編集して掲載しました。初出は2013年3月28日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。

ある葬儀での“不愉快”な出来事

 知り合いの葬儀が関西の某葬祭場で営まれた。入り口の向こう側に遺族の会社関係者が二人並んで受け付けしている。香典を渡そうと前に進むと、黒い服を着た男性がヌーッと現れ「ハイこれ記入して下さい」とA5サイズほどの紙を渡してくれた。

 参列者も多く、無用な混乱・混雑を防ぐ方法として、あらかじめ住所、氏名、故人との関係などを記した紙を香典に添える方法はなかなか合理的だといったんは感心したが、そのうち腹が立ってきた。そのこと自体にではない。彼のことば、しぐさ、そして顧客(遺族や葬儀参列者)への配慮についてだ。

 いわゆる「喪服」とは少し違った、しゃれた黒いスーツと、黒に銀のドットが混じったしゃれたネクタイ。とがった靴の先や髪型がいかにも今風でイケメンな彼。イケメンが葬儀の場にふさわしくない、などといちゃもんをつけているのではない。

 彼は続々と来場する弔問客の前に立ちはだかり、渋谷センター街でティッシュ配りをするように、体で軽くリズムを刻みながら「ハイこれ」「ハイこれ」と元気一杯用紙を配布している。時々とり忘れる人が前に進もうとすると「ちょっと! これ、そこのテーブルで書いてからお香典のほう御願いしまーす!」と強い調子でたしなめる。「仕事熱心」なのかもしれないが、弔問に訪れた人たちに違和感を覚えさせる振る舞いだ。遺族は右手奥の祭壇の置かれた大きな部屋にいて、この様子を見ていないのは不幸中の幸いだった。

 時折、葬儀社の先輩とおぼしき人が彼の横を通り過ぎても、格別注意もしない。いや、むしろ「頑張っている。参列者を見事にさばいている」と「評価」している様子だ。そうだとすれば、その人を含めこの人たちは「自分たちの仕事の本質」を理解しているとは言いがたい。

(写真:KOHEI 41 / PIXTA)
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